H.I.P HAYASI INTERNATIONAL PROMOTION

LIVE REPORT

マルーン 5

MAROON 5 Asia 2025 – Tokyo

2025.2.8 sat at 東京ドーム
open 16:00 / start 18:00
Opening act:DJ Mailbox

2年ぶり東京ドーム公演3days
誰もが待っていた名曲の数々に心を掴まれた夜

例年よりやや暖かい2月の東京、水道橋駅へ降り立った。MAROON 5東京ドーム3days公演の2日目のためだ。ゲート前には、多くのファンがお目当てのグッズを求め長蛇の列をなしていた。開場を待ちわびる人々の表情は、皆一様に輝いている。そんな様子を見渡して驚かされるのが、ファンたちの年齢層の広さだ。若いカップル、親子連れ、デビューから追いかけているであろう年齢の方。とにかく“老若男女”を具体化したような光景。デビュー以来20年以上世界で活躍し続ける彼らの、軌跡ともいえる情景だった。
と言うのも、筆者はMAROON 5のライブへ足を運んだのは今回が初めて。どんな盛り上がりを見せるのか、パフォーマンスはもちろん、ライブならではのオーディエンスの反応も楽しみにしていたからだ。
期待に胸を高鳴らせたファンたちが席につき始め、会場が徐々に熱を帯びて来始めた17時頃、登場したのはオープニングアクトを務るDJ Mailbox。MAROON 5の登場までまだ1時間弱あるため、1人で来ている筆者にとっても気持ちを盛り上げてくれる存在はありがたかった。サブリナ・カーペンターの『Espresso』といった新しめのものから、ジャクソン5の『I Wont You Back』、アッシャーの『Yeah!』など、メジャーな曲も多く流れた。ブルーノ・マーズの『24K Magic』が流れたときは歓声が上がったほど。約30分で開場をしっかりと温めてくれた。
18時になると照明が落ち、観客たちの一瞬の緊張が空気を震わせた。ハリー・ベラフォンテの『Jump In the Line』の陽気なラテンサウンドが流れると、その緊張がふっと緩む。赤と白のライトに照らされメンバーが登場し、待ちに待った瞬間が来た。1曲目は『Animails』。割れんばかりの歓声が開場を満たした。力強くも切ないメロディーに乗ったボーカルのアダム・レヴィーンの美しい歌声に鳥肌が立ち、ちょっと待って、と気持ちを立て直す間も無く、その世界観にずるずると引きずられるように、聴き入ってしまった。そしてそのまま間髪を入れず2曲目の『One More Night』へ。そんな世界観に没入しているところへ、流れたのは『This Love』。筆者の中ではこれぞMAROON 5。あのピアノのイントロが流れてくるだけで、2004年のあの頃が走馬灯のようにめぐるくらい、街中で耳にした曲だ。当然、この曲を待ちわびたファンも多く、手を高くあげ、歓喜の声を響かせた。そして、演奏を止め会場が一体となった合唱でも胸がグッと熱くなり、花道で披露されたアダムのギターソロも情熱的で釘付けにならざるを得なかった。

『Stereo Hearts』の美しいピアノイントロが流れると、ここで初めてMCが入る。花道を進み、開場を端から端までゆっくりと見渡すアダム。「20年以上応援してくれたみんなのおかげで、俺たちは大きくなったんだ」と短く語ると、その後はマット・フリンの軽快なドラムソロがあり、『Harder to Breathe』に入る。合間には技巧派のジェームス・バレンタインの軽妙なギターソロが響いた。そこに向かい合うアダムと視線を合わせるシーンも見られた。とにかく流れが早くテンポがよく、ほぼノンストップでライブが進んでいく。花道を走り、動きを見せたアダムとジェームスとは正反対に、ギターのジェシー・カーマイケルと、ベースのサム・ファーラーは定位置を守り、全体の演奏を支えていたことも印象深かった。
『Lucky Strike』のイントロが流れると手拍子が起こり、皆が手をあげ縦に揺れる。水色の鋭いレーザービームが飛び交うと会場はさらなる盛り上がりを見せた。そこからアダムの遊びのあるコール&レスポンスが数分続き、『Sunday Morning』へ。ポップなリズムと、繊細で伸びやかなアダムの高音が耳に心地よく響く。そして、『Payphone』『What Lovers Do』『Makes Me Wonder』と、曲が変わるたびに歓声が上がり、熱は上がっていく一方だった。

ここで、アダムがキーボードのPJ・モートンに話しかける。アダムが「いくつグラミー賞とったんだっけ?」と聞くと、「5個」とPJが答えた。「5個……5個って! すごくないか?! 今年はノミネートされなかったけど」と言うと、「したよ」とPJ。「したのか! 知らなかった!」「受賞はしなかったけどね(笑)」と、和やかに話した。するとアダムが「それはおかしい! 君はすごい才能だよ、俺は君と一緒に組めて本当にラッキーだと思ってる」とPJを称え、拍手を贈ったシーンもあった。そして、彼のソロ楽曲である『Heavy』が披露されたのだが、この曲は彼が2013年に出したソロアルバム[New Orleans]に収められている楽曲だ。MAROON 5のポップで華やかな楽曲たちとは全く違う、どっしりと厚みのあるファンクで、また一味違った盛り上がりを見せた。そこから『Maps』と続き、アダムの余韻のある高音に更に引き込まれるようだった。
『Memories』の、若くして亡くなってしまったマネージャーに捧げられた歌という背景は、ファンの間では有名な話だ。アダムがスマートフォンのライトをつけるように促すと、揺らめく光が会場中に広がる。その幻想的な光景と、アダムの歌声に涙を拭うファンの姿も見られた。そして『Don’ t Wanna Know』『Love Somebody』と続き、『Moves Like Jagger』でラストを飾り、「Thank You So Much Tokyo!!」と残した。

アンコールでは、アダムとジェームスが2人だけで登場し、アコギで『Lost Stars』を弾き始めたがすぐに『She Will Be loved』に移行。『Lost Stars』を楽しみにしていたファンからは残念がる声も聞こえた。が、それもまたライブならではのパフォーマンスと思おう。1日目も同じようなシーンがあったそうだが、『She Will Be loved』の途中、花道で語りかけるように歌うアダム。そして、その視線の先のアダムの愛妻ベハティ・プリンスルーと少しはにかんだ娘さんの姿がヴィジョンに映し出された。そんな微笑ましい一場面に出会えるのもライブの醍醐味と言えるだろう。その後、『Girls Like You』が流れると、これまでステージ上のヴィジョンはアダムを始めメンバーを映すことがメインだったが、ここへ来てMVに出演した女性たちの映像が映し出された。全体的に光の少ない印象のステージだったが、ここへ来てグッと華やかさをました。そして、ラストは待ちに待った『Sugar』で締め括られた。直前に行われた人気投票、この時の歓声がやはり1番盛大だったと記憶している。
正直、凝った派手な演出もなく、リズミカルに進んでいったという印象だったが、だからこそ演奏に、歌声に没頭することができたのだと、振り返ってみて思う。90分のライブで耳にすることができた楽曲はどれも人気の高いメジャーな曲ばかりで、個人的には満足度の高いライナップだったと感じた。

メンバーたちが退場した後、余韻が残る会場で、ふと気になったことがあった。冒頭で書いた、老若男女たち。順次促される退場アナウンスを待つファンに、思わず声をかけてみたくなった。20代女性は初めてのライブで、カリフォルニアに住んでいたことがあり、その頃からのファンだと言う。30代女性2人組は2回目。アダムが大谷選手のユニフォームを着ているのを見て、日本を好きでいてくれていることが嬉しかったと語った。60代のご夫婦は2人ともが大ファンで、今回初めてのライブのために宮崎からやって来たそう。好きな楽曲は『Sunday Morning』。MAROON 5の魅力はと聞くと、なんと言ってもボーカルだと言う。他とは一線を画す声の美しさと声量、そして、思わず身体が動いてしまうポップさ。「とにかく最高!」の一言をいただいた。30代男女6名は、2年前の2022年のドームにも同じメンバーで来たそうで、今回も張り切って抽選に挑んだが、全員分取れるか不安だったそう。せっかくなので前回との違いを聞くと、シンプルな演出と、テンポが良かったそうだ。「今年は時間ぴったりに始まってびっくりした(笑)」とも。次回も必ずチケットを取る!と、早くも次回の来日を心待ちにしている声が聞けた。
それにしても、20年以上世界中で支持され続けるバンドの演奏とはどんなものなのかと、生で聞けることを楽しみにしていたのだが、あれだけ動き、歌い、息切れひとつせず90分を歌い切ったアダム。その歌声は20年前に初めて聞いた時と何も変わることなく、伸びやかに響いていた。あの透明感のあるファルセットが健在なことに心底驚いた。そしてそれを支える巧みな技術を持ったメンバーたちの演奏とのバランス、どこを切り取っても美しさを見せるコーラスとのハーモニー。それらを耳に、そして目の当たりにして、今まで来なかったことをとにかく後悔した夜となった。3日間でトータル約15万人の観客動員を果たした今回の東京ドーム公演。褪せることのない名曲たちと、磨き続けて来たパフォーマンスをまたすぐにでも見たいと願う。

[TEXT by 石原愛子]
[PHOTO by bootswallace, SOSHI SETANI]


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