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LIVE REPORT

栄喜

『栄喜道 IV』REVENGE

2019.12.14 sat. 渋谷 CLUB QUATTRO
open 17:15 / start 18:00

完全決着を果たした栄喜のリベンジ
満面の笑顔に溢れかえるシャム祭り!

 突き抜けるような青空に恵まれ、人々でごった返す12月の渋谷。さらにクラブクアトロのビル周辺では輪をかけた人だかりが際立つ。[『栄喜道 IV』REVENGE]への入場を、今や遅しと待つ人だかりだ。超満員となった場内では、栄喜Tシャツはもちろん、大切に保管されていたであろうSIAM SHADE Tシャツも目立つ。この日は、栄喜がSIAM SHADEの楽曲でメニューを組んだ年に一度の“シャム祭り”。ほぼ半々に匹敵する男性ファンの多さは、バンドキッズたちを魅了し続けたSIAM SHADEならではの客層だろう。
 本公演は[LIVE TOUR 2019「栄喜道Ⅳ」東京公演]として、本来10月12日・13日に予定された東京2デイズなのだが、関東・甲信越・東北地方に記録的被害をもたらした台風19号の猛威をもろに食らって、初日の12日公演はあいにくの開催中止。急きょ翌13日に2回公演する振り替え対応がとられた。だが、やはり来場できないファンも多く、栄喜本人をはじめとしたメンバーにとっても悔しさの残る出来事となってしまった。しかしそこは稀代の熱血漢・栄喜である。彼の熱意と制作スタッフの尽力により実現したのがこの日であった。開催を願った想いの強さはファンも同じだ。場内には、隠しようのない期待がみなぎっている。

 高ぶるオーディエンスの鼓動とリンクするような照明の明滅、壮大なSEが高らかに響き渡り、突き上がる拳がメンバーを呼び込む。そして、巻き起こる大歓声の壁を撃ち破るように、栄喜の硬質なシャウトが一閃。こじ開けた隙間をソリッドなギターリフと骨太ビートが爆走する『Money is king?』、続けざまの『No!Marionette』では切れ味鋭い高速ボーカルが畳み掛ける。序盤から問答無用のブチ上げナンバーでオーディエンスのギアを一気に引き上げ、冒頭とは思えない一体感が生まれていく。
 公演中止の悔しさ、尽力したスタッフやファンに対する想い、そして今回の実現に至る喜びを、栄喜は「感謝します!」の潔い一言に集約し、間髪入れず次曲へ。重厚なヘヴィグルーヴから熱狂を紡ぎ出す昇天ナンバー『BLACK』、そして『せつなさよりも遠くへ』『1/3の純情な感情』『Dreams』という大ヒットナンバーの3連発。いきなり惜しげもない贅沢メニューに対し、序盤からピークを感じさせるフロアの狂喜乱舞。改めてSIAM SHADEというバンドの輝かしい軌跡と、それを築いてきた楽曲クオリティーの高さを痛感させられる。そして同時に、一筋縄ではいかない多彩な楽曲群を、ソリッドなエッジから艶やかなロングトーン、澄んだファルセットまで、栄喜の表現力は再現どころでは収まらない。当時の記憶をより色鮮やかに、より表情豊かに響かせていく。
「これ、俺たちが22〜23歳の時に作った曲(歌)でしょ? もうないよ、こんな気持ちは(笑)。いや、成長してるってことだけど…」。ようやくおとずれたMCタイムではサポートベーシストを務める同胞・NATCHINとともに、やや自虐的なSIAM SHADEトークで爆笑の渦を巻き起こす。

 そして、メジャーデビュー曲『RAIN』で中盤戦スタート。キャッチーなメロディをシンプルに聴かせながらも、さりげないテクニカルなプレイが輝きを放つ楽曲だ。(小川)大介とツッチー(土屋浩一)は煌びやかでバリテクなフレーズを涼しい顔で掻き鳴らし、NATCHINとYOUTH-K!!!のリズムアンサンブルは破壊力抜群。バンドキッズたちがコピーに明け暮れた、カッコ良くてテクニカルな楽曲群。サポートするメンバーも当然の猛者揃いである。随所に散りばめられた“参加したくなる仕掛け”を鮮やかなプレイで彩っていく。『LOVESICK~You Don’t Know~』『SHAKE ME DOWN』『BLOW OUT』と続くブロックでは、よりしなやかさを増していくような栄喜のパフォーマンス。グングンとオーディエンスを引き込んでいき、トドメとばかりに大ヒットナンバー『グレイシャルLOVE』。サビで響き渡る大合唱は、楽曲が持つ底知れない間口の広さをも再認識させる。
 圧倒的なキャッチーさを見せつけたと思えば、一転、鋭い眼光で「来い!来い!来い!来い!」と煽る栄喜。強靭なパワーコーラスが野生を覚醒させる『PRIDE』を皮切りに、ここからSIAM SHADEの振り切れた一面を見せつけていく。イントロのスラップベースからキレッキレのプレイでNAITCHINが引っ張っていく『Outsider』、目まぐるしく変化するリズムアンサンブルに脳をかき回されるような『Allergy』、無機質なデジタル音にフリーキーなギターフレーズが飛び交う『JUMPING JUNKIE』。キャッチーでありながらも懐は凄まじく広い。ポップな要素から、セクシャルな艶、ダークやダーティな側面まで、SIAM SHADEが継承したロックの真髄が繰り広げられていく。
 驚くべきことに、ライブ開始から70分を経て終盤へと突入してもなお、栄喜の切れ味は加速を続けていく。オーディエンスを叱咤するかのように煽り続けながら、喉を絞り、全身を躍動させてシャウトする『D.Z.I.』。フロアからは咆哮コーラスが響き渡り、髪を振り乱してのヘドバンが咲き乱れる。エンディングへ向けて、ステージとフロアの凄まじい応酬。しまいには「もっと来てみろ! 来いよ! バカヤロー!」と(笑)、振り切れたテンションで本編ラストの『GET A LIFE』へ。いまだヘタること知らないソリッドなシャウト、切り裂くようなハイトーンボーカルが凄まじい。圧巻である。

 アンコールに応え登場した栄喜は、今現在、楽曲制作への意欲に溢れていることを伝える。転じて、来年はライブを控えレコーディングに向けて引きこもる宣言。転じて、入手したての超貴重なヴィンテージマイクの話(この日3度床に激突するのだが)。転じて、常に元気なボス(河村隆一)とのジムトレーニングこぼれ話、そして新しい自転車を手に入れた話……MCをほとんど挟むことなく駆け抜けてきたせいか、果てしなく話題が飛び火していくお喋りが止まらない(笑)。その人柄を包み隠さないのは栄喜ならでは、そんな和みのひと時もまた[栄喜道]ならでは。
「さぁ、冬眠する前に情熱的にいっておきましょうか」と空気を引き戻し、繰り出されたのは『PASSION』。エモーショナルな歌声とともに、全身で伸びやかにパフォーマンスする栄喜。そのムードは楽器陣にも蔓延し、ステージの存在感をより一層広く、大きく感じさせる。泣きメロが疾走する『CAN’T FORGET YOU』で会場一体となったビッグコーラスが響き渡り、強固な一体感は『Don’t Tell Lies』の熱狂へと昇華。ここにきて、またしてもシャウト連発のハードナンバーである。まさしく全身全霊、来年の制作期間を前に全エネルギーを吐き出すような堂々たるステージだ。
 エンディングに相応しい見事な盛り上がりだったが、燃え広がった大火はそうやすやすとは鎮火しない。客電が点灯する中、鳴り止まないアンコール。そこに、くたびれ半分、喜び半分、柔和な笑顔の栄喜が再々登場し、予定外のダブルアンコールへ。何げない「え〜と、何やると思います?」という問いかけに、即座に返ってきた「『Dear…』!」の声。一瞬の間ののち「あ、『Dear…』やってほしい? しょうがねぇ、じゃあ(笑)」と、即座に曲を変更し『Dear…』をプレイ。SIAM SHADEを代表する泣きの名曲は、この日一番の大合唱を巻き起こす。

 まさにオーラスを飾る大喝采。ファン、演者、制作スタッフ、誰もが待ちわびた[『栄喜道 IV』REVENGE]、これにて完結!かに思えた。3度目のアンコールの呼びかけもあったがそれも収まり、出口へと人が流れつつあったところで、突如巻き起こる狂喜の歓声。ステージを振り返ると、悪ガキのような笑みをたたえた栄喜がそこに。「もう1曲やっていいですか!」と、『Fine weather day』を投下する。『Dear…』で会場を包み込んだ感動をかき消すような性急なビートに、フロアは熱狂が暴発しまくるお祭り騒ぎだ。なるほど、栄喜ならではのやんちゃでハッピーなサプライズ。会場全員が満面の笑顔に溢れかえった[栄道 IV]、リベンジは見事なまでの完全決着を果たした。
「音楽をやってきて、自分が作るものがわかってきてて。そういう自分の期待をも裏切るような、もっとムチャクチャな曲を作りたい」という、新境地での楽曲制作に向き合うため、来年はライブを控えるという栄喜。だが、2019年ラストを飾る、アコースティックライブ[Scrum! Try!]を12月29日を控え、そして[栄喜道V]の開催への意欲も見せてくれている。SIAM SHADEが25周年を迎える2020年、来年も彼から目が離せそうもない。

[TEXT by GO NEMOTO]
[PHOTO by SOSHI SETANI]


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