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LIVE REPORT

THE冠

髑演会 2013 41才の春だから〜 表冠・裏冠

2013.3.28 -29 at 下北沢SHELTER
open 19:00 / start 19:30

圧倒的なエンターテイメント!!
冠徹弥の人生劇場、二夜連続でお届け!

→ 表冠 (2013/3/28)
 ”41歳の春だから”という、ご存知、天才バカボンからのテーマ引用の元、東名阪の3箇所で展開される各地2デイズのツアー「THE冠 髑演会 2013 41才の春だから~ 表冠・裏冠」。41歳になれば誰しも口にするこのテーマ。とはいえ、その引用を許されるのはまさしく人生に一度切り、季節限定のものである。非常に貴重な冠 徹弥の集大成なのだ。その期待度は開演前のフロアを見渡せば一目瞭然。平日にも関わらず会場は満員である。Tシャツ&タオルで臨戦態勢バッチリの若者もいれば、息を弾ませスーツ姿で駆けつけて来たサラリーマンの姿も。今回のツアー用に作成した堂々たるバックドロップアンプ、それを覆い隠す(笑)アンプの壁と要塞のごときドラムセットがそびえたステージを一様に見つめ、何なら揉み手でその登場を待ちわびる。その様子は下北沢シェルター2日間に渡って同様であった。

 初日は、そんな観客の期待でじっとりと会場の温度が上がる中、暗転とともに「力石のテーマ」が流れ、いよいよ鉄兜・鎧にその身を包んだメタル皇帝が降臨する。渦巻く歓声を切り裂くような、”ほな行こか、シモキタテェァァァァ~!”の咆哮とともにツアー初日・表冠が幕明けだ。

 楽曲はいわゆるライブ定番を中心に据えたという表冠初日。腰を弾ませる重低音のビートと野獣のごときコール・アンド・レスポンスでアオり倒す「燃えよ」で、のっけから否応なくテンションを高みに持っていく。そのまま怒濤のヘドバン・ブロックと哀愁を帯びたワルツ・ブロックが波状攻撃を見せる「傷だらけのヘビーメタル」、そして「マスカラ」という、のっけから重厚な三連弾。
 ”このテーマでライブをしたいというのは3~4年前から考えてました。ただ、自分の思ってるハコのサイズではなかった(笑)。でも、この下北シェルターは大好きです。お前らの顔、全部見えます。お前らの熱い思い、全部伝わってきます。それを俺らが……倍返しにして殺したるわ! ボケコラ!”
 冠流・愛のムチが一閃、続く「永遠の咬ませ犬」ではちょうど喉も温まって来たか、メロディックな歌にその絶品の歌唱が冴え渡る。低音シャウトやファルセットによるハイトーンボーカルも交えつつのスタイルではあるが、核の部分では絶対的な歌唱力が揺るがないのが冠の魅力だろう。オフザケの歌詞の中にもチラつく悲哀が突き刺さる。久しぶりの披露となる「その後のマネー」では、既にシワシワとなったスーツ姿の拳も突き上がる。
 ”ハゲ~! 漬けもの石~!”のヤジに、隠し切れないショックと”うるさいボケ! ハゲ!”とささやかな抵抗を見せ、中盤へ突入。ハイトーン、ラップ、メロディアスな歌という、様々なアプローチの交錯する「エビバディ炎」では、定番の浪花節劇場コーナーにて、沖縄でナンパしたら顔をさされたという自虐的な暴露ネタを挟み込み、PAスタッフや照明スタッフまで含めて場内笑殺。続く「ブラックサガス」をはじめ、中盤ではPANTERAに代表されるような90年代以降のメタルというか、よりリズムワークの豊かな楽曲が目白押しとなり、「なんで言うたんや」「あなたの知らない世界」ではフロアが沸騰したかのような盛り上がりを見せる。

 ”ええ調子やないか。ようやくアホになれたんちゃうか?”というアオりを経ての「中3インマイドリームス」では、パンツを尻に食い込ませた冠が、誰よりもアホなパフォーマンスで応戦。特にこの曲では、エンディングに鬼のヘドバン・ブロックが控えており、まだ中盤だというのに(笑)、全体力を振り絞るようなステージングが圧巻だ。冠の面白さと対極にある、彼の真剣勝負の顔が除いた瞬間だった。そんな一幕を経てのMCでは。
 ”たまに思った…もう無理なんちゃうかって。もうこれ以上お客さんなんて来るわけがないって、たまに思った。ただ今日、こんなにたくさん来てもらってます。自分が高校生ぐらいの時に音楽始めた時には、まさか思い描いていない41歳ですけど(笑)、それでも続けてて良かったです。だって今日、お前らに会えたからな。そのために生きて来たんとちゃうかな?って、ちょっと思いますよ。今日という日を俺らのライブに使ってくれてありがとう。ヘヴィメタル、貫いて行きます”
 照れ隠しの笑いを交えつつだが、ヘヴィメタルの十字架を背負い、イバラの道を歩み続ける冠の姿を知るファンだからこそ、それに温かく応える。ワンマンならではのホッコリとする空気もありつつ、続くはそんな哀愁を胸の奥にしまい込んで、奮い立つ中年オヤジの意地全開のナンバー「三十路四十路オヤジエレジー」。息も絶え絶えに”これが明日のことを考えないライブです(笑)”と、ラストに向けてさらに攻め続ける。「鉄の心臓」ではフロアをヘドバンと拳の大波が埋め尽くし、”休んでるヒマはないぞ!”と、むしろ自分に言い聞かせるようなアオりを一発入れ、「マザーアース」「最後のヘビーメタル」で壮絶なる一体感を作り出し、堂々たる本編ラストを飾る。死力を振り絞る姿に感動である。
 そしてアンコール。独特な空気を放つサンダー(Ba)をイジり倒し、明日の裏冠ではサンダーにモノマネをさせることを明言。さらには、時代の流れに逆らいながらもヘヴィメタルを貫いて来た男が”オズフェス”に呼ばれないことへの怒りから(笑)、改めてヘヴィメタルを背負って行くことを高らかに明言。それを受けての、新しきヘヴィメタルの幕明けソング「NEW WORLD」でシェルター再燃!! 最後の最後は祭り囃子とブギーの絶妙な融合を見せる「担がれた冠」。フザケにフザケ、それを全肯定した冠節の真骨頂と言える大団円ナンバーだ。二夜完結とは思えぬ大ボリュームである。最大級の満足感を持って初日が終了した。

→ 裏冠 (2013/3/29)
 さて、二日目。前日の表冠では、”明日はたぶん知らない曲が多いと思います。だからね、明日はスンとなってると思います(笑)”と、普通に裏冠への不安を口にしていた。さらには本日はソールドアウトとのこと。観客の期待が高まれば、それに伴って高まるメンバー側のプレッシャーの中、さぁどうなることか?と、心待ちにしていたところにSEが流れる。が、この日のSEは『天才バカボン』のオープニング・テーマ。なるほどね、などと思ってると、まさかの冠先生、バカボンパパのコスプレで登場! やはり天才です(笑)。殺傷力抜群の出オチに続き、96年、冠の名を世に知らしめたバンドSO WHAT?時代の名曲「一発かましたれ」で幕開け。個人的にはSO WHAT?時代のライブをひたすら見て来た僕は、いきなりの鳥肌爆弾に一発KOしてしまった。むろんフロアは爆ノリ。続くハードコア的アプローチのスラムダンスナンバー「花占い」、そして”この曲、知らないかも知れませんが、やっちゃいますよ!”という煽りを経ての「D.M.T.R.」。フック満載のミディアムのロックンロールに、認知度お構い無しで盛り上がる。当初の不安をラクラク払拭する温度の急上昇を見せ、裏冠が幕を明けた。

 ”お前らの知らない曲、どんどん行くけどええかな~? 知らん曲でも関係あらへ~ん!”と繰り出されたのは「関係あらへん」。ここで早速、前日に無茶振りしたサンダーによるモノマネを披露。内容は昭和の遺産、柴田恭平の”関係ないねッ”でした。続く「民よ」と、ここまでは1stミニ~1stフルアルバムあたりの楽曲を中心に構成。しかしさすがにコアなファンである。むしろライブで滅多に聴けない楽曲を心待ちにしていたかのようなリアクションだ。猛烈に楽曲を、そしてパフォーマンスを楽しんでいる。昭和歌謡にメタリカへのオマージュがチラ見えする冠ワールドな楽曲「私だけの十字架」も文句無しの盛り上がり。
 ちなみに。曲終わりの冠のキメ顔にピンスポット、というのは前日でもお約束の演出であるが、ここでピンスポットがなぜかギターのベッチに(笑)。当然ベッチもキメ顔で応え、「おい! THE 冠やぞ、これは! なにコッチのハゲ映してんねん!」とひと吠え。ゲタゲタ笑いながらも、照明さんにまでしっかりボケさせるスキのない演出に感心してしまう。
 そして、鮮やかとも流麗とも言える冠の舞台進行は続く。「私だけの十字架」が昭和の名ドラマ『特捜最前線』のエンディング・テーマと同じタイトルであることを語りつつ、ドラマを知らない若いサンダーをイジりつつ(笑)、これまたSO WHAT?時代の楽曲「特So what?最前線」へとなだれ込む。SO WHAT?時代の楽曲は、ジャーマン風味の勇壮なメロディや、ガツンと上がれるフックも満載で、初見でも野郎が熱くなれるような純粋にカッコいい秀曲が多いのだ。懐かしさと共に、レア曲に抜群の反応を見せるフロアから改めてそのことを実感する。

 ここでバカボンパパ冠は一時退場。サンダーによるフワッとしたトークタイムを経て、改めて登場したのはハードロックカフェ京都府宇治店のテツ・冠氏、だそうだ(笑)。ロン毛にデカサングラス、裸にヒョウ柄ジャケット、ショッキングピンクのスパッツという、フェミニンな時代錯誤メタラーキャラ(笑)。歌うはファルセット全開の「Oh!プリティーガール」。ナメくさってはいるのだが、笑いの中にもしっかりした技量で魅せる。これを歌えるシンガーはハッキリ言ってそうそういないだろう。

 そしてこの衣装のままバラード「此処に」を披露。ロン毛ヅラを外し、さらに危険なルックスではあるのだが(笑)、気がつけば圧倒的な歌唱力が違和感を凌駕した。はずだ。続くは、早着替えの後、先日まで冠が出演していた劇団☆新感線の舞台より「五右衛門ロック」。スゲェ~爆ノリ! さらには『ギャグマンガ日和3』から「超合体戦士サンゴットV」のテーマでは、恐らく本人達も想像していなかったであろう盛り上がりを見せる。これぞ裏冠であり、これぞTHE 冠ファンだ。その結びつきの強固さに脱帽である。この課外活動三連発の締めは、ご存知、映画『デトロイト・メタル・シティ』より「SATSUGAI」。文句無しのスラムダンスで沸きかえる。

 ここでちょっと真面目な話。”この間、沖縄に行って。僕ら『海』って曲があるんですけど、”沖縄”と”戦争”をテーマにしてるんですよ。”戦争”とか”爆撃”っていう歴史があって、それを忘れないためにも海へ行こうっていう。でも、沖縄でやるのはちょっとビビッてたんですけど、それを本気で歌ったら、沖縄のお客さんが『海って曲を作ってくれて、それをライブでやってくれてありがとうござます』ってすごい握手してくれたの。もうそれだけで作った甲斐がありました。行って良かったと…だからお前ら、一緒にビーチ行かへんけ? 一緒にビーチ行ってオイル塗ってくれへんけ?”からの、二夜連続となるナンパ顔さされネタでしっかり笑いを巻き起こして「海」、続く「登坂車線」という2曲のダンス・ナンバー。振り幅の一端をさらに押し広げる。

 本編終盤は再び鋼鉄魂の炸裂だ。「俺なりのペインキラー」ではその無敵の、鋼鉄の喉力を、「ニセックス」ではフロアを暴発しまくりのヘドバン大会に変え、汗だくの無数の拳に彩られた「力(Riki)」で本編ラストを飾った。

 さぁ、本当に最後の最後のアンコールでは、改めて鉄兜&鎧の正装で登場。前日から数えて全37曲、ここまでは被り曲は一切無しだが、初の被り曲「傷だらけのヘビーメタル」かと思いきや、いやいや「~女編~」である。しっとりしたムード歌謡、ミラーボールの切なく回転する中で、観客はサイドステップ(笑)。完全に冠ワールドにZシンクロ! ある意味、唯一無二の一体感と言えるだろう。からの、続くは”男編”。楽しすぎた二夜の終焉へと向かう会場全体、全身全霊のヘドバンで再び再沸騰し、祭りのフィナーレはやはりこの曲「担がれた冠」。ステージのメンバーは、濃厚すぎる二日間の密度から解放されたかのようなハジケたステージングで、祭りの温度を頂点へと持って行く。突き上がる拳の先に雄々しく立つ冠には、もはや神々しさすら感じでしまう。終演時、『天才バカボン』エンディング・テーマが流れる中で、ステージを去るメンバーを最後まで見守り続ける観客達の姿が非常に印象的だった。

 圧倒的なエンターテイメント性に満ち、練られた演出と、プロフェッショルを徹底したパフォーマンスがそこには常にあり、それだけで彼らのショウは充分に楽しめるわけだが、何せ多少なりとも脂っこいTHE 冠である。そんなんは苦手という人もいるとは思う。んが、そういう方々は、できればもう一歩踏み込んでもらえないだろうか。文中述べたように、僕はかなり以前の冠徹弥という人を知っているのだが、恐ろしいことにその本質は何も変わらない。この浮き沈みの激しいバンド業界において、不変であり続けることは非常に恐怖のはずなのだ。エンターテイメントの奥にある彼の意地と男気が垣間見える瞬間、冠徹弥の人生劇場にドンハマりすることは請け合いである。

[TEXT by 大島サトル ]
[PHOTO by YUJI HONDA]



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