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LIVE REPORT

SEX冠

~SEX MACHINEGUNS vs THE冠~

2013.12.06 fri at Akasaka BLITZ
open 18:30/start 19:00

“12月の赤坂にヘヴィメタルを轟かせろ!
鋼鉄エンターテイメントの連続爆撃!!

“雨は夜更け過ぎに~♪”なんてフレーズが、自動的に脳内をリピート再生する12月の赤坂。きらめくイルミネーションに彩られた街並みを横目に、赤坂サカス一角にあるBLITZへと足を踏み入れればそこは…何がクリスマスじゃ!とばかりに、ドンシャリでガッツリ歪んだ愛への欲望が渦を巻いていた。
そう、今夜はSEX MACHINEGUNSとTHE冠のカップリングツアー”SEX冠2013″の最終日。ドデカいバックドロップを背景に、ステージ上には両バンドの機材が全て飾ってあり、アンプが7台、ドラムセットが2台(もちろん2バスなのでバスドラ8個)という、要塞のごとき威容に期待値が上がる。しかもSEX MACHINEGUNSにおいては限定復活という形で実現した今ツアーであるだけに、開演前から場内の飢えた熱気はハンパない。もしも雨が降っていたならば即座に蒸発し、夜更け過ぎには雷鳴轟くホーリーナイトとなるだろう、なんて上手いことを考えていたら、場内に天竜源一郎の入場テーマでもある「サンダーストーム」(高中正義)が高らかに鳴り響く。
ステージ上にANCHANG(SEX MACHINEGUNS)と冠徹也(THE冠)の両ヴォーカリストがマイク片手に登場。まずは二人によるオープニングトークである。沸き返る大観衆を前に”何じゃコリャ~!””気持ちいい~!”とステージ上の二人。ようやく迎えたファイナルと1000人もの観客を前にした感慨深さが表情に見て取れる。

今回のツアーは11月初旬の東京・新代田FEVERを皮切りに、北は仙台、南は福岡・小倉までの全13本。300人に満たないキャパのライブハウスも含めたツアーだった。この機材量や移動行程を見れば、その過酷さは想像するにたやすい。ツアーを振り返ってのエピソードから、話題は”ヘヴィメタルへの愛”まで。また、このツアーは”お互いを高め合う”という趣旨もあるわけだが、ステージの上では”勝負”という部分も浮き彫りになる。面白トークだけではなく、時間の経過と共に引き締まって行く冠の表情も印象的だった。徐々に熱を帯び始めたトークは観客の期待値を煽っていき、会場をライブモードへと誘って行く。

この日の 先攻はTHE冠。いきなりの新曲「帰ってきたヘビーメタル」で幕を明け、ド頭から熱量をピークで放出する。そのアグレシッヴモードに、場内は暴徒たちの不法集会のごとき凄まじい景色へと早変わり。んが、そっちの振り幅もあれば真逆の振り幅もあるのが冠流。続く「最後のヘビーメタル」では、マイクをブン回し人力フェイザー効果(?)を生み出すパフォーマンスからの、大会場に映えるドデカいミラーボールとともにお届けする哀愁ブロック。お馴染みだが無敵の鉄板ネタだ。冒頭2発でTHE冠とは?を遠慮なく叩き付ける。
2ブロック目からはゲストギタリストのK-A-Z(DETROX、カイキゲッショク)を迎え、硬質かつ重厚な7弦ギターで音像にイカツい彩りを加えていく。伸びやかな歌唱が際立つ「帰郷」、図太いブギーを刻む極悪ストンプナンバー「哀罠メタル」の2曲も新曲だが、会場はますます加熱されていく。既に浸透しているのかもしれないが、一見さんにも受け入れられるキャッチーさがTHE冠の持ち味だろう。歌やメロディはもちろんとして、幅広いリズムアレンジと楽曲展開の巧みな緩急は、定番的な安心感から新鮮なグルーヴまで、様々な楽しみ方を提供してくれる。吉本興業が育んだ関西人の血が濃すぎる冠のステージアクションは言わずもがなだ。

“THE冠って実は10周年なんですよ。2003年にSO WHAT?っていうバンドを解散しまして、解散してすぐにTHE冠を始めたんです。その時にギターをK-A-Zに手伝ってもらってて。10年前にK-A-Zの家に行ってね、押し入れみたいなところでデモテープ録ってました。その頃の懐かしい曲、一緒に炎のように燃えてくれるか!”
というMC流れで始まった、1stアルバムからの選曲。「エビバディ炎」では、鉄板ネタその2の浪花節人生劇場。”あんた、このクダリやり出したん37の時やで。あんたもう42やで〜!! いつになったら売れるんやハゲ!!!”と、自虐な人情芝居を熱演。さらには聖飢魔ⅡからSIAM SHADEまでもネタに巻き込んで笑いをかっさらう。一転、「Riki 力」では、K-A-Zのレンジの広いギターに引っ張られるかのように、全体の出音がまた数デシベル上がったかの印象だ。近くで観ていた純朴な少年をものたうち叫ぶ、万人共通の凶暴サウンドで目まぐるしく会場の空気を塗り替えていく。
“THE冠、『帰ってきたヘビーメタル』というアルバムを発売いたしました(2013年10月23日リリース)。(世の中的にも)ヘヴィメタルが本当に帰ってきてますから、ワクワクしてます。こんな楽しい空間、ヘヴィメタル捨てたもんじゃない。俺らとマシンガンズでね、メタルの火を絶やさぬようにやり続けますから、ずっと応援してください。もうね、俺はこんなライブしてますから、お笑いメタルとか芸人メタルとか言われてますけど…。わかりました。いわゆる正統派って言われてるヤツらと来年ガンガンやっていこうと思ってます。正統派の中に入って内側からブチ破ろう思ってます! 負けるかボケコラァッ!”
咆哮とともに諸手合わせて2000の拳で応えるフロア、そして繰り出されるは新曲「糞野郎」。MCで着火したフロアにゴリゴリのハードコアサウンドが油を注ぎ、そこかしこにサークルモッシュが出現。”祭りだぁ!!”の雄叫びとともに「担がれた冠」では、会場が狂気のダンスフロアと化す。そして間奏では”担いでくれ〜!”とステージを降り、沸騰したような観客の頭上をクラウドサーフ。ヤバい。冠カッコイイ…。イギー・ポップとダブッて見えたのも束の間、”もういい! 戻してくれ! ヤメろ! チンコ触るなぁ!!!”と絶叫。よし、いつもの冠徹也だ。そして猛烈な盛り上がりのまま突入した「傷だらけのヘビーメタル」。エモーショナルなメロディを携えた泣き笑いの爆走は、ステージラストに相応しい加速を見せる。1時間に詰め込めるだけ詰め込んだような濃密なステージは終了。バトンを渡すなんて奥ゆかしさは微塵もない、必殺にして皆殺しの先攻であった。

そして後攻、SEX MACHINEGUNSである。興奮冷めやらぬ場内に、幕開けを思わせる勇壮なオープニングSE「INVITATION」(ハロウィン)が鳴り響く。ズオォ〜っとさらに密集し前へとうごめく観客、その目前に駆け足で登場し”Yeah!!!!”とハイトーンシャウト一閃、タイトルの特異性からも代表曲に数えられる「みかんのうた」で戦闘開始である。そもそもカッチリ構築されたステージアクション、そしてメンバーの振り付けを完璧にミラーリングする大観衆も彼らのライブの見所なわけだが、特に随所にキメが仕掛けられた「みかんのうた」である。身に染み付いたかのような最強の一体感をもって、ド頭から唯一無二のSEX MACHINEGUNS空間へと変貌する。
“ただいま! 奇跡の復活でございます。ヘヴィメタルシャウト〜ッ!!”
観客は女性6:男性4くらいで男性も意外と多い男女比率。咆哮から絶叫まで、レンジの広い大歓声で限定復活を讃える。今回のメンバーは正式メンバーであるANCHANG(Vo&Gt)とSHINGO☆(Ba)の二人に加え、約15年前のメジャーデビュー当時のメンバーでもあるSUSSY(Gt)、沖縄のハードロックバンド紫のLeon(Dr)がサポートとして参加。メンバー紹介を経て、”今日はあんまり喋らんようにしようと思ってるんで”と言いながらも、序盤のMCから早速会話が交錯し合い、トークが断続渋滞を巻き起こしているのも彼ららしい。そして”そんなすぐになぁ、俺のトークに乗っかるヤツは、許さん!””怒りのパンチを喰らえ!”という掛け合いからの「TEKKENⅡ」。ステージを縦横無尽に駆け回るフロント3人、そんな激しい動きの中でまるで楽器を手先指先のごとく操るメンバーの演奏力に改めて驚愕である。

SEX MACHINEGUNSの演奏力は本当に凄まじく、そして惹き付けるのだ。ピッキングハーモニクスを絡めたリフ、ツインギターのハモによるソロ、ライトハンドやスウィープ、マシンガンピッキングなど多彩な速弾きの数々、ギターキッズには動悸息切れが止まらない垂涎プレイのオンパレード。低音が時に暴れ過ぎてしまう感じは大会場ならではだが、そんな冷静な分析すら許さないようなリズム隊の怒濤のプレイもヤバい。「森の熊さん」「ONIGUNSOW」ではもはやトランスミュージックに通ずるような、カオティックなビートの洪水に脳と内臓が振動する。それに呼応する観客は、何かイケないモノが分泌されてるかのごとく、チギレろ!とばかりに首を振る。金曜ということで仕事帰りらしき人も多いせいか、客層はわりと一般的だな〜なんて思っていたのだが、ものの見事に本性を露にしている。明日から週末だ。首痛も1〜2日の安静できっと治るだろう。
しかしこの尋常でない高揚感はメンバー側も同じだった様子だ。
“なんか思ったよりもテンションがおかしくなるの早いな。本日のこの会場にはアホばっかり集まっております(笑)。それが気持ちいいよ、ロックですから。別に面白いことを言う必要は全くないんです。冠もね、実際あんだけ歌えるヴォーカリストってなかなかいないですからね。Tバックなんか履かんでも全然ええのにな(笑)!”
と、冠イジりからの、”まだヴィジュアル系を引きずっている男”と称してSUSSYイジり。前述したようにSUSSYは98年のメジャーデビュー当時のメンバーであり、その3年後にマシンガンズを離れるも、ここ数年、再びサポートという形で参加を果たしている。
“SUSSYは出会った頃、「ANCHANG、僕へヴィメタ知らないよ」って言ってたんですよ。それが何でヘヴィメタルに?”(ANCHANG)
“やっぱね、熱い魂を持った人のそばにいると俺も熱くなってくるんだよ、ANCHANG!”(SUSSY)
“ちょっ待って。俺からしばらくの間離れてたじゃない”(ANCHANG)
“や、距離が離れてもANCHANGのこと、忘れたことないよ!”(SUSSY)
“お前良くないよ、それ。ステージの上だけエエこと言うの”(ANCHANG)
“違うよ! いいことばかりじゃないよ! あの時こう怒られたなチキショウ! でも振り返れば…って、そういうのもあるよ”(SUSSY)
“どうしてあの時に気付かなかったんだろう、お前は…”(ANCHANG)
とまぁ、腐れ縁ならではのご愛嬌な一幕も。同時にシーンを支える兄貴分的なANCHANGを感じさせる一幕でもあった。そんなSUSSYに前振りを託して始まった「JAPAN」。ドッシリした重厚なビートと、しっかり歌唱を聴かせるミディアムナンバーだ。ここまで「森の熊さん」(09年)以外はメジャーデビュー当時からの重要曲で押して来たメニューで構成。そしてその必殺メニューの全開っぷりはその後も続く。

ライブはいよいよ後半、ひたすらシャウトし続けてもまだツヤを失わないANCHANGの歌に感嘆する。轟音アンサンブルの凄まじさもさらに上昇し、そのまま終盤に向けては力押しである。ステージを見てもフロアを見ても、”燃焼”や”死力”といった言葉が頭にチラつく。ラスト「SEX MACHINEGUNS」では、熱狂の向こう側に到達してしまったかのような状況の中、”さぁかかって来い””俺はいつでもここにいる”と歌う姿に感動すら覚える。それに応える観客もまた、わずかな力も残さず振り絞るようにヘッドバンキング。そこには身も心も融合したかのような完全なる一体感が生まれていた。
THE冠が緩急、変化球も多彩な構成で魅せたかと思えば、SEX MACHINEGUNSは一級品のド直球を主体にした勝負。共通項も多い2バンドだが、その魅せ方・楽しませ方は全く別の角度から突き刺さる。ひたすらステージに釘付けとなり、気付けばヘトヘト、非常に濃密な2ステージが終わった。
が、宴は終わらない。オーラスは全出演者がステージに並んだド派手なセッションだ。2バス仕様の2台によるツインドラム、壁を作る5台のギターキャビ(※K-A-Zは2台を組んで使用)と2台のベースキャビはフルで出力され、SEX冠のテーマソング「SEX冠 METAL FIRE」をこれまで以上の猛爆音で掻き鳴らす。が、猛烈な音量感よりもその豪華な印象が先行し、楽しさで溢れ返るような空気に包まれる。あれだけ油っこいステージを繰り出してきたわけだが、ここでは達成感に満ち足りた清々しいメンバーの表情が印象的だった。

“また来年もSEX冠やりたいと思います。その時はマシンガンズには限定復活じゃなく、完全復活とお願いいたしましょう!”と、半ば勝手に(笑)、冠による続行宣言も飛び出し、赤坂を爆撃したヘヴィメタ祭りは幕を閉じた。
“本当は、癒し系の音楽だったり、コジャレた音楽が好きなのが普通の人やと思います。冠のCDなんて出したってね、特殊な人しか買いません(笑)。普通にやってたんでは、誰もジャパニーズヘヴィメタルに振り向いてくれない時代なんですよ。売れたら世の中間違ってるんです(笑)。だからANCHANGは、当時ヴィジュアル系やってたんですけど(笑)。でもね、そんなんでも好きというヤツがおるんですよ。だから僕らはこのステージに立ってられるんです”
とは、ANCHANGのMCだ。個人的には、魂込めた音楽を生み出し、それをライブでちゃんと再現できる人への評価は、然るべき形で広まる世の中であって欲しいなぁと思っている。THE冠とSEX MACHINEGUNSの2バンド。ヘヴィメタルに陶酔し、愚直なまでにそれを表現し、日の目を浴びんとあがき続ける。このご時世において難しいことは百も承知なのに。非常に不器用なバンドだが、本質のブレない男気あるバンドであるとも言える。
そして不器用だからこそ、独自の魅せ方や聴かせ方を同時進行的に研ぎ澄ませていった。結果彼らは、そんじょそこいらには真似のできない圧倒的なエンターテイメント性を手にした。この日、改めて痛感したのは、メタルキッズを唸らせる実力と一般人も惹き付ける楽しさの混在である。”ヤツらはオモロイだけ”とタカを括ってるメタルファンも、このレポートで初めて2バンドを知った音楽ファンも、なんなら別に音楽ファンでなくとも、一発でトリコにする起爆剤を彼らは何種類も抱えているのだ。
まずは来年行なわれるTHE冠のツアーに足を運ぶことをお勧めする。そしてSEX MACHINEGUNSの完全復活と、SEX冠2014の実現に乞うご期待である。

[TEXT by GO NEMOTO ]
[PHOTOS by YUJI HONDA]



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