H.I.P HAYASI INTERNATIONAL PROMOTION

LIVE REPORT

RED HOT CHILI PEPPERS

The Unlimited Love Tour

2024.05.20 mon at 東京ドーム
open 17:00/start 19:00

ベストヒット満載のスペシャル来日公演!
「生きる姿」を生で見れたなんて感謝しかない!

当然のごとく、音楽を通じてレッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下チリペッパーズ)を知り、チリペッパーズの音楽を支持する自分なのだが、彼らを見守る感覚はいつしか変わっていた。もちろん「音」があっての存在なのだが、それは彼ら自身に「人生」を感じること。生きている証として、彼らはどんなトラブルがあってもバンド活動を止めない。メンバーチェンジを繰り返し、何としてもバンド活動を続けようとする信念を感じる。それは金なんて安いものでなく、人間として生き延びようとする手段とさえ思えてしまうのだ。バンド活動と「生きる」ことが直結している印象を深く感じてしまい、この感覚は他のバンドには芽生えたことのない感覚と言える。

バンドによってはアルバムリリースごとにテーマを設け、そのテーマを元に表現し進化を遂げる手法がある。L.Aメタルのモトリー・クルーなんて良い例だが、悪魔とロックをリンクさせた邪悪なコスチュームで注目を集め、時代のロックスターになった。しかしそんなキャラを自ら壊し、グラマラスなキラキラ衣装で色気を振り撒いてファンを振り回す。が、結果これがL.Aメタルのブームの中心となる。それだけでは止まらない。バンドスタイルは更に豹変。今度は大型バイクに跨り男臭いワイルドな革ジャン姿で魅了し、バッドボーイなロックで時代を自ら塗り替えた。後にはセクシーな女性ダンサーをステージで踊らせ、ロックを通して目でも楽しめる完璧なショータイムを披露し、更に成功を収めた経歴がある。これは全て策略的なバンドコントロールに違い無いのだが、チリペッパーズにだってきっとある…。だがしかし、あまりにも破天荒すぎて「人間丸出し」になってしまうのだ(笑)。結果的に成功の道を辿っているだけで、お馬鹿なようで賢い?常に一生懸命で健気?な印象さえあるため、そんな彼らを長年見守っていると自然と親近感が湧いてきてしまったようだ。

チリペッパーズ史上でギターリスト問題は避けられなく、1992年の来日公演を思い出す。当時プロデューサーにリック・ルービンを迎えた5枚目のアルバム[BLOOD SUGAR SEX MAGIC]で乗りに乗りまくっていたバンドだったが、ツアー中にも関わらず(しかも日本公演中)ギターリストのジョン(・フルシアンテ)が脱退を宣言。急遽帰国する寸前に辛うじて見た横浜ライブのジョンは、ステージ上で終始背中を向けてギターを弾いていた。翌日の脱退宣言を聞いて、腰が砕けたことを覚えている。あんな輝かしいポジションを築いたにも関わらず、チリペッパーズは一気に大ピンチを迎える。まだ幼児だったフリーの娘に、一筆書きのメンバー募集の広告を新聞に掲載したり、バンドは死に物狂いで(生きる延びるために)メンバーを探し回った。苦戦に苦戦を重ね、助っ人のごとく、二度目のオファーで加入したのは同期バンドのジェーンズ・アディクションのギターリストのデイブ(・ナヴァロ)だった。脱退も驚いたが加入も驚いた。今思えば、この化学反応は危なすぎた。アート感が強くアバンギャルドな彼が残したギターはチリペッパーズ史上最もな音圧で賛否両論だった。歴史に残る1枚のアルバムを後にデイブはバンドを去り、精神面の落ち着きを取り戻したジョンが奇跡の復活。奈落の底を見てきたジョンのギターは、枯れて輝きのないものの、哀愁漂うエモーショナルな音をチリペッパーズにもたらした。以前の攻撃性とパワー溢れる音楽性とは異なり、より優しくメローな音色は成熟期を迎えるバンドと合致。言い換えれば、一般的にも受け入れやすい音楽性と化し、再びチリペッパーズのセールスは爆発的に跳ね上がった。しかし、本来のチリペッパーズと異なる音楽性に物足りなく、気持ちが離れた人も少なくなかっただろう。しかしそれとは裏腹に、新たな新世代ファンを大幅に獲得してしまったのだ。おそらく今回の来日公演に足を向ける方々は後者に値すると思われる。この成功はチリペッパーズの歴史を追う自分にとって、あまりにもドラマチックで感動的だった。この時点で策略的なモトリーには到底真似出来なく、彼らだから生んだマンパワーを証明した。過去に同じギターリストで3枚以上のアルバムを作ったことのないチリペッパーズだったが、これで波に乗ったと思われた。がしかし、再び音楽的欲求が別方向に向いたジョンは再び脱退。もはや破天荒なジョンに特効薬は見当たらなく、やむをえずジョン本人とも交友が深くバンドのクルーだったジョシュ(・クリングホッファー)がギターを後任。陰ながらチリペッパーズを支えたジョシュは10年間で2枚のアルバムに参加。そして時を経て、ジョシュも心の奥底では願っていたジョンが再び復帰し、2019年に黄金期メンバーは再び再開。これ以降、今自分の目の前に存在しているのである。思えばチリペッパーズとは、結成時のキーマンだったギターリストのヒレル(・スロヴァク)をドラッグで失っている。そのせいか、チリペッパーズは人一倍必死に生きようとしている(バンドを続けようとしている)ように見える。それは他界してしまったヒレルへの誓いにも思える。度重なるメンバーチェンジも「生きる力」で乗り越えてきたと思えるのだ。我が強く破天荒なバンドのキーマン2人(アンソニー[・キーディス]&フリー)だが、その「生き延びるため」だろうか?仕上がった作品を今聴くと常にギターリストを尊重した音作りをしている。それはメンバー愛に溢れ、常にメンバー同士が向き合ってチリペッパーズの音として答えを出している。

2024.5.20の開演予定19:00ジャスト。ステージに現れた弦楽器の2人は互いを見つめ合いジャムりだした。それをチャド(・スミス)のビートが追いかけ、緩く2024の二日目公演は始まった。もちろん既に東京ドームは大歓声だ。昨年に来日したにも関わらず、再びみんなチリペッパーズを待っていたのだ。のたうち回るかのように暴れ、ジャムりながらフリーはステージ床に横たわる。そしてゆっくり呼吸を整えると、渾身の指先で『AROUND THE WORLD』のリフを弾き出す。歪んだベース音に歓声は再び大きく湧き、少し落ち着いたテンションでアンソニーがマイクを取った。妙な脱線もなくスマートに[CALIFONICATION]以降の曲を中心に16曲を披露。演奏は1曲1曲ごとに仕切り直す進みだったが、常に歓声は途絶えることなく鳴り響く。特にそれは、会場後部の客席ファンから強く感じた。ここ数年のチリペッパーズを裏切ることなく演奏は続き、最新アルバムからの披露は3曲。ライブ後半にはアルバム[BLOOD SUGAR SEX MAGIC]から骨太なロック『SUCK MY KISS』を聴かせてくれたが、もはや今のチリペッパーズは[CALIFONICATION]以降の方が馴染んでいるように思えた。とは言え、初めてジョンと掴んだ当時の革新的な栄光を忘れないようにしているのか?我々世代のオールドスチューデントに応えるためか?アンコールは『UNDER THE BRIDGE』や『GIVE IT AWAY』の名曲でこの日の終止符を打った。

こうして明らかにチリペッパーズは生きていることを証明してくれた。それはモトリーのように作られたものでなく、ストリートが生んだリアルな生き様と、バンド生命に賭けた人として生き抜こうとする「人間力」だった。これを、まるで腹を痛めた子を見守るかのように、微笑ましく、涙ぐましく、彼らの「生きる姿」と活躍を遠くで心から見守ることが出来た。この生きる姿を生で見れたなんて感謝しかない。この場を借りてありがとうございました。

[TEXT by コマツ(コークヘッド・ヒップスターズ/ローバイトマガジン)]
[PHOTO by Teppei Kishida]


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