MURO FESTIVAL 2012
2012.07.14 sat at 東京晴海客船ターミナル特設ステージ
Open 11:00 / Start 12:00
東京に新たなフェスが、生まれた一日。
「ライブハウスに還元できるフェス」という思いを込めて開催。
ジメジメとした湿気と、どんよりとした曇り空が連日のように続き、梅雨明け宣言が「まだか、まだか」と待ち通しい2012年7月の東京。すぐそこまで来ているはずの夏が待ちきれないこの時期に、東京に新たなFESが誕生した。その名はMUROFES。レインボーブリッジや東京タワーを一望でき、東京の海の玄関「晴海埠頭客船ターミナル」という東京ならではのロケーションでの開催だ。
ここで少しおさらいしよう。そもそもMURO FESとはどのようなフェスなのか?
近年野外フェスが増え、お客さんがライブハウス離れをしていると感じたShibuya O-Crestの店長室氏が、ライブハウスから始まったバンドが、野外という場所でのライブを行い、ライブハウスシーンにも還元していける様な場所が作られたらいいなという思いで立ち上がったフェスである。
ライブハウス、アーティスト、そしてオーディエンスまでもを巻き込むという熱い思いがびっしり詰まったMUROFES。ラインナップも、AJISAI/アルカラ/BYEE the ROUND/Dirty Old Men/FLiP/グッドモーニングアメリカ/GOOD ON THE REEL/Jeepta/鴉/LACCO TOWER/LUNKHEAD/真空ホロウ/SUPER BEAVER/THE UNIQUE STAR/UPLIFT SPICE/winnie/バッグドロップシンデレラと、現在もライブハウスで積極的に活動しているアーティストばかりだ。
そんな開催当日。誰もが心配していた天気は、不安を一瞬で吹き飛ばすくらいの熱い日射しと東京を一面を覆いつくす青空が、梅雨明け宣言されているんじゃないかと疑わしくなる最高の天気だ。「笑っていいとも」のSEが流れ、サングラス姿で登場したのは主催O-Crest店長の室氏。MURO FES開催までの経路、イベント名については「自分の名前までつけちゃいました(笑)」とお茶目な発言する場面もあり、「夜中の雨が心配だったけど、みなさんのおかげで晴れて良かった。知り合いがいっぱいで安心しました。あとは楽しんでもらえたらいいです!!バンドもお客さんも、スタッフも楽しんでくれたら良いイベントになると思います!」と室氏らしい挨拶で幕を明けた。
トップバッターはオープニングアクトのバッグドロップシンデレラ。MURO FESのステージはLEFT STAGE、RIGHT STAGEの2ステージ。
止まることなく交互にライブが行われていくという中で、着々と力をつけている彼らはオープニングに相応しいライブを見せてくれた。
休む間もなくSUPER BEAVERへと。Shibuya O-CrestでのワンマンライブをSOLD OUTさせた、今も勢いが止まらない彼等からはリアルなロックでオーディエンスを魅了。
続いて、大型フェスにも名を連ねる三人組、真空ホロウの登場。ラストに演奏した「誰も知らない」では、涙を流す人もいた程の素晴らしいライブを見せてくれた。
続いては、BYEE the ROUND。疾走感あるギターサウンドと切迫感あるライブパフォーマンスには脱帽。独創的な彼等の世界に入り込んでしまった人も多いはず。
その流れを引き継ぐかのように、男女混合4ピースバンドTHE UNIQUE STARがスタート。ハイトーンなボーカルと演奏力が定評な彼等だが「不適な笑みを浮かべる日」からその演奏力の高さには驚ろかされるどころか、オーディエンスがタオルを振り回すなど、ライブとしての一体感をも見せつけるライブバンドだった。ちょうど暑い日差しを照りつける太陽が真上に来たころ、鴉の登場。
いまや大きな会場やメディアなど様々な所で活躍している彼等だが、美しいメロディとどこか切ない歌声で暑い日差しをも忘れさせるパフォーマンスを見せてくれた。
次はAJISAIへバトンタッチ。「送信エラー」から始まると、彼等が持つ美しいギターサウンド、晴海埠頭ターミナルに流れこむそよ風が場内を包む美しいライブだった。
続いて、結成13年目を迎えたLUNKHEAD。サウンドチェックでは「一応サウンドチェックです」と言いながらも「夏の匂い」をまるまる演奏するというサービス精神(?)で会場から歓声が沸いた。フェスらしく盛り上がる曲を中心に演奏し、ラストの「カナリヤボックス」では会場内の盛り上がりも最高潮を迎えた。LUNKHEADは今後ソロ活動がメインとなる為、年内のバンドとしてのライブはこの日で最後だったという。ファンからは「寂しいというより、これからも付いていきたい!」という声も聞き、とても印象深いライブとなった。
続いては、GOOD ON THE REELの登場。「なんか、良い感じ」という意味のバンド名、そんな彼等のライブが始まると、場内に端正な千野の言葉と声が伝えるストレートな言葉が響き渡り、聴いているみんなの心も熱く、優しい気持ちになったことは間違いない。まさに”良い感じ”のパフォーマンスで観るものに感動を与えるステージだった。
続いては、男女ツインボーカルのwinnieが登場。ioriの力強いバッキング、疾走感溢れるメロディでオーディエンスを魅了。「MUROFES歌えよー!」のokujiの声で場内は合唱。
一体感あるステージングを見せ、エモ・パンクロックバンドUPLIFT SPICEにバトンタッチ。千織のステージを飛び降りてのオーディエンスと一緒に歌いあげる姿は圧巻。細い身体から想像できないエネルギーを感じたライブを見せてくれた。
続いて、沖縄出身のガールズバンドFLiPの登場。ライブ中、サチコの「飛べ!飛べ!」の声に会場内も沸き、ガールズバンドとは思えないパワーを感じた。次は、千葉発の4ピース・バンドJeeptaの登場。彼等の持つエモーショナルなロックサウンドに会場全体が揺れ、強くて破壊的なだけではなく、聴いているものに、優しさや切なさを感じさせる魅力的なステージだった。会場内も夕陽に照らされ始め、いよいよ後半戦。
次はDirty Old Menの登場。一曲目からライブでおなじみの踊れるナンバー「メリーゴーランド」でスタートすると、一気にステージとの距離がグッ!と近くなり、それからnewアルバムより「doors」「スターチス」などを披露。今年4月に今のメンバーとなった新生Dirty Old Men。そのライブはより力強く、パワフルなステージで魅了した。
続いては、今年結成10周年を迎えるLACCO TOWER。始まるやいなや、ステージ全体を使ったパワフルな演奏、パフォーマンスはさすがの一言。「苺」や「林檎」、「花弁」など緩急ついたセットリストで湧かせてくれた。
R-STAGEのラストは、9/30にツアーファイナルを渋谷CLUB QUATTROで控えているグッドモーニングアメリカの登場。19時を迎え東京タワーやレインボーブリッジがライトアップ。一層ロケーションは最高だ。Crestとの出会い、エピソードを語った4人の顔はキラキラしていた。Crestが大好き、そんな気持ちをしきりに口に出していた彼等。そんな気持ちを音に乗せハイトーンなボーカルで聴かせてくれた。タナシンの「3,2,1,MURO FES・ファイヤー!」で会場にいるオーディエンスが1つになった瞬間だった。
そして大トリを飾るのはアルカラ、自称ロック界の寄行師。2002年に結成以来、着実に力を付けている彼等。新旧織り交ぜたセットリストで会場を湧かせた!力強く、激しい演奏でオーディエンスを魅了し、気づけば彼等の自由で狂気に満ちた世界へ吸い込まれていた。最後に稲村が言った「MURO FESが末永く続きますように」その言葉にライブハウスという場所で築き上げた、バンドと室氏の熱い信頼関係を感じた。
イベントを終え、帰り道に向かう中で、あるお客さんからこんな声を聞いた。
『まるでライブハウスに居るみたいだった』
笑顔でそう話したこの短い言葉には、この”場”では終わらず「次もライブハウスに行きたい」という風に感じ取れる印象的な言葉であった。
MURO FESが描く「ライブハウスに還元できるフェス」という思いと、O-Crest店長室氏の「今後もCrestや他のライブハウスに出続けて欲しいバンドばかり」と言った今回のブッキング。そして、オーディエンスまでも巻き込んで『次はライブハウスへ』という気持ちでひとつになったイベントMURO FES。これからのライブシーンと共に末永く続いていく、新たなフェスが、生まれた一日となった。
[TEXT by カワハラジュン]
[PHOTO by YUJI HONDA]