H.I.P HAYASI INTERNATIONAL PROMOTION

LIVE REPORT

Incubus

Incubus Japan Tour 2015

2015.3.7 sat at 豊洲PIT
open 17:00 /start 18:00

熱狂と恍惚以外は何もない
3000人が音と一つになった圧巻の光景
これぞウエストコーストロックの最高峰!

 開演まであと10分に迫ろうかという時刻でも、会場エントランス付近は大勢の人に溢れ、ドリンクカウンターにはアルコールを求める長蛇の列。併設された物販ブースにはさほど見向きもせず…やはりまずは酒である。メインの世代は30代が中心、恐らくは90年代後半から2000年代にかけてさんざんロックでハジケて来た世代。そんな大人たちが迎えた週末、そして極上のロックンロールパーティー。Incubus Japan Tour 2015、3年ぶりの来日公演である。沸々と高まる興奮をビールで抑え込むかのような群衆で埋め尽くされた場内には、ジリッとした熱気が漂っていた。
 この日は究極の生命体ことMAN WITH A MISSIONがゲスト出演を果たす。
「コレデモカトイウクライCDヲ聴イテキタバンドト対バンガ出来ル。本当ニアリガトウゴザイマス!」
 若い世代に猛烈な人気を誇るビッグフェス常連バンドの彼らだが、実際のメンバーのテンションはまさに観客同様。喜びをそのままステージングへと昇華し、ガッチリ構築されたバンドサウンドをもってそのキャッチーなメロディを押し出す。楽曲クオリティと演奏力の高さもさることながら、言うまでもないが圧倒的なエンタテイメント性を持った彼ら。なんせ頭は狼である。海外での活動も視野に入れているとのことで、海を越えて日本に届く絶賛の声が楽しみだ。満場の洋楽ファンをも沸き立たせた40分のステージを終え、充分に会場温度を上げてIncubusへとバトンを繋げた。
 ステージ転換もそろそろ落ち着いて来た頃合い、突如ステージ背面にはタイムコードのカウントダウンが投影される。ジリジリとフロアの温度を上げていき、残り1:00の表示を切るとオープニングSEが。抑えて来た興奮もフロアのあちらこちらでプチ爆発が始まっている。カウント0:00、フロアの仕上がりは万全、そんなまっただ中に5人が登場する。リラックスしたような、しかし充分な貫禄を帯びたその立ち姿。そして巻き起こる怒濤の歓声を一瞬にしてスケールの大きい立体的なアンサンブルが包み込んだ。1曲目は『WISH YOU WERE HERE』だ。
 会場の隅々まで響き渡る繊細にして大胆なバンドサウンド、芯は強いが心地よい浮遊感を帯びたブランドン・ボイドの美声、これぞIncubus、これぞウエストコーストロックの最高峰、そんな堂々たるパフォーマンスを見せつける。VJによる映像も相まって、最速の瞬発力をもって楽曲世界の深淵へと引きずり込まれる。

 その流れを推し進めて『ABSOLUTION CALLING』へ。この曲は3/25にリリースされるシングル『TRUST FALL』収録曲。つまりは新曲である。だが、まるで新曲であることを感じさせない会場内のテンションだ。同期のリズムトラックと共に機械のように淡々とした、だが一音一音はクッキリ前に飛び出る迫力を持ったビート、様々に姿を変え空間を浮遊するギター、そのド真ん中で熱を帯びた情感豊かな歌が胸を焦がす。すでにYouTubeにMVがアップされているので是非ともチェックを。
 ゆったりと穏やかな空気から始まったこの日のステージは徐々に熱をはらんでいき、続く『VITAMIN』では、まだ中盤に差し掛かったぐらいだが、これが今夜のピークか!と思わせるほどのパフォーマンスと、それを受けての盛り上がりに。楽曲が持つプリミティブな生々しい力強さもさることながら、メンバー同士の絶妙な呼吸が伝わるスリリングな演奏に肌が泡立つ。自分たちの演奏に満足がいったのか、ジャンベを叩いたブランドン・ボイドは演奏後のインターバルでも余韻を楽しむかのように“タン、タタン、タンタ、タンタンタン、バン!”と自分のジャンベのフレーズを口ずさむ。ご満悦な様子だ。
 インターバルでは、そんなリラックスしたメンバーのひとコマが随所に見てとれる。1曲ごとにしっかりと間を取り、カタログ的に展開されていくステージ。それは構成面でステージを作ることにこだわらず、一曲一曲が持つパワーだけで勝負しているかのような潔さも感じられる。インターバルはユル~く、楽曲が始まった瞬間に空気は張りつめ、感動するほどの吸引力をもって観るものを引き込んでいくのだ。
 『CIRCLE』では、ブランドン・ボイドがジャンベの隣に設置された口径の大きなフロアタムをプレイ。マイク・アインジガーはこれまで印象的だった澄んだ音色の空間系サウンドから一転、オールレンジのズ太いリフワークでうなりを上げ、DJキルモアによるスクラッチや電子音がフリーキーに飛び回る。そして再びの新曲、ニューシングルのタイトル曲『TRUST FALL』。ほとばしる熱量と力強いリズムアンサンブルに背中を押されるイカした楽曲である。リリースまであと少し、乞うご期待だ。

 『IN THE COMPANY OF WOLVES』でしっとりと温かい空気で会場を満たしたかと思えば、荘厳なエンディングから『A KISS TO SEND US OFF』へ。太陽フレアの映像を背にホゼ・パシーヤスのドラムが大鉈を振るい、強靭なビートを生み出す。クラウドサーファーも続出し、会場はここで二度目のピークへ。圧倒的な表現力をもって、あらゆる表情の楽曲を緩急自在に繰り出して来る。
 『PROMISES, PROMISES』では、マイク・アインジガーがDJキルモアのブースへと移動してピアノをプレイする一幕も。ピアノの音色とブランドン・ボイドの美声、そしてメロディの美しさに酔いしれる中、マイク・アインジガーはその変化を感じさせないスムーズさで演奏途中にDJキルモアにピアノを託す。再び駆け足で自分のアンプ前へ移動し、ギタリストに舞い戻るという荒技もやってのけた。それにはブランドン・ボイドも拍手で讃える。続く『SICK SAD LITTLE WORLD』は、目まぐるしく変わる場面転換が特徴的で、楽器のアンサンブルも緻密に構築された楽曲構成。これを一糸乱れぬ無敵の呼吸でプレイする。個人的にはベン・ケニー(Ba)のテクニックに釘付けとなる。ため息がでるほどの技巧を誇る彼らだが、それを飄々と繰り出してくるのだ。時には遊びながら、純粋にジャムを楽しんでるかのようなパフォーマンス、そんな側面にもバンドの奥行きが垣間見られ、その底知れぬ実力を痛感させられる。

 ライブ終盤は『DRIVE』『PARDON ME』と大ヒットアルバムからの曲を連発し、大合唱、クラウドサーフの波を巻き起こす。よりドラマティックなライブアレンジがなされた『MEGALOMANIAC』では、ハンドクラップ、ストンプ、突き上がる拳の数々、そこには熱狂と恍惚以外は何もない。3000人が音と一つになった圧巻の光景が拡がる。
 そしてアンコールは『WARNING』『A CROW LEFT OF THE MURDER』の2曲。本編ラストが凄まじい熱気をもって迎えたクライマックスだっただけに、観る方のハードルも上がっているわけだが、彼らには関係ない。それぞれを音源では体感できない圧倒的なダイナミクス、躍動感、疾走感を伴ってプレイ。『A CROW LEFT OF THE MURDER』のエンディングはそのままビートルズ『I Want You (Shes So Heavy)』に繋げ、残響ノイズの壁を残しステージを後にした。
 ツアー最終日のステージは1時間50分に及んだが、終始飽きさせないワクワク感を与えてくれた。Incubusというパズルはピースを決められた場所に収めるものではない。場面に応じて色とりどりの輝きを放ったメンバーそれぞれのピースは、その動物的な直感と瞬発力をもって無限の組み合わせをもたらす。これこそまさにロックンロールであり、それを飄々と、むしろ自らが楽しんでやってのけるあたりもまたロックンロールである。ウエストコーストロックの最高峰は、ロックンロールの神髄を見せつけてくれた。バンドってスゲーなぁ。

[TEXT by GO NEMOTO]
[PHOTO by Official Photographer ]



PAGE TOP