H.I.P HAYASI INTERNATIONAL PROMOTION

LIVE REPORT

H.I.P. PRESENTS「FACE TO FACE」
THANK YOU STUDIO COAST

Creepy Nuts / yama

2022.1.12 Wed at USEN STUDIO COAST
open 18:00 / start 19:00

時代を彩るCreepy Nutsとyamaが初顔合わせ
聖地”STUDIO COAST”の熱いラストスパート

 日本海側が大雪で奮闘していたこの日。東京はといえば、けっこう好天続きで、思ったほど寒くない。あの新木場駅から会場までの魔の橋も、普段ならこの時期は死ぬほど寒い強風に煽られたりするのだが、この日は風も大人しく、帽子が飛ばされたりなんてこともない。1月いっぱいで閉館が決定しているSTUDIO COAST。“ここに来るのもこれが最後かも?”なんて考えると、ちょっぴり寂しくなってくる。訳もなく周りの景色を見回したり、ゆっくり歩いてみたり。この日のイベント名にも含まれている[THANK YOU STUDIO COAST]という言葉を、噛みしめながら到着した。会場内のオーディエンスは、20代前半を中心に年齢層はかなり幅広く、男女比もほぼ半々くらい。Creepy Nutsとyamaによる初の顔合わせとなるライブだが、どちらのファンも上手く混じり合っているという感じだろうか。

 開演時間の19時きっかりに、yamaのステージでスタート。ブルーのライトがチカチカと点滅するなか、オープニングSEに乗せてバックバンドの4人が登場。その後yamaが出てくると、『あるいは映画のような』で始まった。白いフードとパンツのファッションはカジュアルなようでいて、じつは自身を守る鎧のような役割も担っているという気がする。ほとんど見えない顔には、勿論アイマスクが付けられている。黒ずくめのバックバンドの4人もそれぞれが顔の一部を隠していて、調和とコントラストが共存。豪快でパワフルなサウンドが奏でられるなか、それに押し切られるものかとyamaがうわずり気味のエモーショナルな歌声で斬り込んでいく。激しく、優しく、緩急をつけながら。その本気度がオーディエンスにも伝わったのか、1曲目から大きな手拍子で迎えられていた。

 グルーヴィーで煌びやかな『Downtown』、早くも登場したシグネチャーソングの『春を告げる』、ジャジーでファンキーな『a.m.3:21』と続けられるが、バンドとの絡みは一切無し。だが、バックバンドに背中を押されるかのように、どんどんyamaは自身の深みへと足を踏み入れ、その情景をオーディエンスの前にさらけ出していく。余計なギミックは皆無で、歌だけで伝えようとする。やがて夕陽のような暖かいライトに包まれた『スモーキーヒロイン』で、ひとつのゴールへと到達。yamaが心を全開にして、会場のオーディエンスとひとつに繋がったと思わせる瞬間だった。直後のMCでは、Creepy Nutsとのステージを楽しみにしていたと語り、「コーストの最後のステージに立てるのは嬉しい限りです」とコメント。yama自身にとってもこの日のステージは、忘れられない想い出となるに違いない。
 後半は、ひと際伸びやかな歌声が印象的だったロックバラード『Oz.』、キーボードのソロから始まり、美しさとカオスが神妙に手を取り合った『真っ白』、そこから一転してドライヴ感溢れるハードロック調で圧倒した『ブルーマンデー』と続いた。この辺りになると、激しい感情の起伏に翻弄されながら、一緒にジェットコースターに乗っているかのようだ。バンドの演奏はいっそう激しさを増し、yamaも全身全霊をかけてマイクを握る。いつの間にやら暴れ放題のバックバンドを、猛獣使いのように制していた。
 ラストナンバー『世界は美しいはずなんだ』では、躍動感と至福でオーディエンスを包み込み、これまでのyamaとは異なる一面も披露した。客電が灯されるなか、皆が両手を上げて踊っているなんて、以前のyamaのライブからは想像もできない情景だ。その曲のタイトルにもある通り、美しい希望を残してエモーショナルジャーニーは終着した。

 約20分のインターバルを挟んで登場したCreepy Nutsは、バックバンドをを率いていたyamaとは異なり、2人だけのステージだ。MC担当のR-指定が左手に、DJとトラック担当のDJ松永が右手に位置している、シンプルでミニマルな構成。とはいえ、役者に不足はない。1曲目の『板の上の魔物』から桁外れの熱量をオーディエンスに向かって投げ掛けてくる。観客席の最後部までのせてやる、と言わんばかりの腕力でオーディエンスを自分たちの世界へと引き寄せ、誘導する。それに応えるかのように、オーディエンスもまるで全員が一体の生き物になったかのように同じリズムに身を揺らし、同じ動きでレスポンス。彼らの掌の上で踊らされているという、その快感に酔いしれる。疾走するビートに乗って畳み掛ける『バレる!』、オールドスクールなスクラッチなどを混ぜ込みながら、ファンキーに跳ねる『よふかしのうた』、ステージ狭しと動き回るR-指定につられて、会場全体がピョンピョン飛び跳ねた『合法的トビ方ノススメ』など、どの曲もまったく違ったビートとノリ、多彩なラップを繰り出し圧倒する。本来なら多数のラッパー軍団が寄ってたかってやりそうな、多様なスタイル、声色、スキルを最小ユニットでやってのけるのだから恐れ入る。前半だけで、すっかり彼らのペースに飲み込まれていた。

 MCタイムには、会場STUDIO COASTに対する特別な想いを吐露。テレビ番組[フリースタイルダンジョン]のMCバトル会場として、自分たちがアーティストとなってからのライブ会場として、そして最後のライブ会場としての想いや感謝の意を表していた。また「ラッパーではないけれど」と前置きしてから、yamaのステージについても「ヤバかったね!」と称賛を惜しまない。
 中盤からは、ヒプノティックなビートに乗せて気合を入れまくった『生業』、サイコティックな『耳無し芳一Style』、かと思えば牧歌的だった「風来」、パンクロックな「かつて天才だった俺たちへ」などなど、次々と表情を変えていく。今更ながら彼らの引き出しの多さに驚かされる同時に、変化や進化を恐れず、新しいことにどんどん挑戦していこうという攻めの姿勢に感心させられる。
 2度目のMCタイムでは、STUDIO COASTの秘話や、同会場で開催されてきたイベントageHaの裏話なども飛び出し、笑わせつつ歴史を紐解いた。その後、終盤戦に入ってからは、菅田将暉が不在でも大いに弾けた『サントラ』や『のびしろ』など、今度は吹っ切れたアッパー系ロックとの相性の良さで盛り上げる。往年のブラスロックバンドのシカゴを彷彿とさせる『Who am I』を耳にしながら、“一体この人たちの音楽ルーツの本流はどこにあるんだろう?”などと考えながらニヤけてしまった。

 再びSTUDIO COASTへの感謝などが語られた後、ラストナンバーは最新アルバム[Case]でもラストを飾っていた『土産話』が用意されていた。この曲ほど、この日のライブに相応しい大団円もないだろう。この場に居合わせられたこと、ライブに参加できたことに感謝しつつ、ちょっぴりセツナな気分に。フェードアウトで余韻が残るなか、最後は「また、あの世の新木場コーストで皆さん集まりましょう」というMCで締め括られた。ひとつの時代が終わるとは、こういうことなのかと実感させられつつ、yamaのようなアーティストにとっては、ここが新しい出発点でもあるのだと確信。時代を彩る音楽とアーティストがあるように、皆が愛した“ハコ”も同様に語り継がれていくのだと痛感させられた。

[TEXT by 村上ひさし]
[PHOTOS by nishinaga “saicho” isao]


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