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LIVE REPORT

FALL OUT BOY

JAPAN TOUR 2017

2017.03.22 wed at 東京 STUDIO COAST
open 18:00/start 19:00

ワールドクラスの精度と奥行き
付け入る隙など一切存在しない、盤石のパフォーマンス

 2013年に奇跡的な復活を遂げ、エモやポップパンクのシーンを飛び越えて特別な存在感を見せつけているFall Out Boyが約2年ぶりとなる来日を果たした。当然ながら彼らの人気者ぶりは素晴らしく、今回も全公演がソールドアウト。ツアー初日となったこの日の新木場STUDIO COASTは、3月下旬と言えども冷え込む状況にも関わらず、お気に入りのバンドTシャツに身を包んだオーディエンスが早くから詰めかけていた。
 19時の定刻を少し過ぎたところで照明が暗転するや否や、悲鳴混じりの物凄い歓声がフロアから沸き上がる。その期待感で膨れ上がったオーディエンスの熱狂的なリアクションを受け止めながら、メンバーは落ち着いた足取りでステージに姿を表し、まずは最新作『American Beauty/American Psycho』の冒頭を飾った「Irresistible」でライヴをスタート。初っ端から精度の高いサウンドの中、パトリック・スタンプ(Vo./G./Pf.)は伸びやかな歌声を響かせるのだからたまらない。
 パトリックの歌い出しに合わせ、オーディエンスが大合唱した「Sugar, We’re Goin Down」、変幻自在の曲展開でしなやかにフロアを波打たせた「The Phoenix」から続いた「Alone Together」がまた凄かった。ジョー・トローマン(G.)が軽妙な動きで興奮を誘い、パトリックとオーディエンスの歌声が混じり合った光景はハイライトのひとつであっただろう。

 序盤から3000人を完全に魅了する彼ら。派手な動きこそないが、確実かつ屈強なプレイでいきなりワールドクラスの力を見せつけてくれる。まだまだライヴは始まったばかりなのだが、もうクライマックス級の熱気と昂ぶり。フロアからは絶えず高く手が挙げられ続け、歓声が止むこともない。
 もちろん、攻め手が緩むことはなく、グッと踏み込みながらダイナミックに発展する「The Kids Aren’t Alright」、パトリックが「一緒に歌ってください!」と日本語で呼びかけ、とてつもないシンガロングが巻き起こった「This Ain’t A Scene, It’s An Arms Race」、スタイリッシュなキレと艶めかしさが同居した「Novocaine」と多面的なサウンドに打ちのめされるや否や、ここで暗転し、スクリーンに緊迫感溢れる映像が映し出される。
 どうしたことかとステージに目を凝らすと、中央にはピアノが設置され、パトリックが「Disloyal Order Of Water Buffaloes」を弾き語りで歌い始めるという嬉しいサプライズだ。ピアノのみというシンプルな構成でより一層麗しく響き渡る歌声に聴き惚れていると、中盤からメンバーが加わり、バンドサウンドへと変貌を遂げていく。ライヴだからこそ味わえる、彼らならではの世界観だろう。
 加えて、そのままピアノを加えてプレイした「Save Rock and Roll」も秀逸。イントロからオーディエンスは盛大なハンズクラップで喜びを露わにし、パトリックも曲の終盤にはピンヴォーカルスタイルでステージを動き回るほどの盛り上がりを見せた。

 通常の編成に戻し、ドラマティックな幕開けとフレーズと一体化したようなアンディ・ハーレー(Dr.)のパフォーマンスが印象的だった「Fourth Of July」、心の赴くままメンバーの元へ飛び込みたくなる「Grand Theft Autumn / Where Is Your Boy」と投下した後の後半戦も鮮やかだった。妖艶な赤いライトがその雰囲気をより際立たせ、曲に酔いしれた「Uma Thurman」とピート・ウェンツ(Ba.)とアンディの叩き出すリズムに心地よく翻弄される「Dance, Dance」でフロアの密集度はこれ以上ないほど高まり、感じるがままに体を揺らすオーディエンスによって、さながらフロアは狂乱の宴。
 それにも関わらず、終盤に向けたラストスパートっぷりも格別だった。ピートとアンディがアイコンタクト後に笑みを浮かべるほどのコール&レスポンスが起こった「American Beauty/American Psycho」、曲の中盤ではパトリックとオーディエンスで天井知らずの絶叫を生み出した「I Don’t Care」、適切な重量感と軽やかさを兼ね備えた「Thnks Fr Th Mmrs」と繋ぎ、本編の締め括りとなったのは「Centuries」。スッと滑らかに心へ入ってくるのにいつまでも胸を離れない奥深さ。彼らの醍醐味をここでも思い知らされ、ステージに釘付けになってしまった。

 メンバーがステージ袖へと姿を消してもオーディエンスの高まったテンションは落ち止まず、「Fall Out Boy! Fall Out Boy!」とコールが絶えず繰り返されているフロア。その声に応えぬ彼らではなく、再びステージへ。
 まずはオーディエンスをバックに思い出の瞬間を写真に収め、詰め掛けたオーディエンスへ謝辞を述べた後、いきなりフルスロットルで「My Songs Know What You Did In The Dark (Light Em Up)」と「Saturday」を投下する。特に「Saturday」ではピートがフロアへ身を乗り出したかと思えば、そのまま飛び込むひと幕もあったほど、激情が舞い上がっていた。

 再始動後の彼らは、ヒップホップやR&Bといった要素も際立たせて芳醇なサウンドを生み出していることもあり、この日もバラエティに富んだセットリストとなっていたのだが、どこまでも見事な高揚感を保ち続け、オーディエンスを引き込んでいたのは流石としか言いようがないだろう。様々な要素をFall Out Boyという底知れぬ器に取り込み、序盤、中盤、終盤と隙がなく、著しく高いクオリティを誇るパフォーマンス。世界中から愛されるバンドの妙妙たる風格を存分に味わえた、素晴らしい体験だった。

[TEXT by ヤコウリュウジ]
[PHOTO by SOSHI SETANI]


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