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LIVE REPORT

Buckcherry

Buckcherry Japan Tour 2016

2016.03.23 wed at 渋谷TSUTAYA O-EAST
open 18:30/start 19:30

咲き誇る極上ロックンロールの真髄!
最新作を引っさげての貴重な来日公演

 各地で桜の開花が告げられはじめた3月23日、こちら渋谷O-EASTでは、より甘美でキケンな芳香を撒き散らすLA産チェリーの狂い咲き前線が渡来した。約1年4ヶ月ぶりという嬉しいスパンでBuckcherryが来日を果たしたのだ。今回は昨年8月にリリースしたアルバム、その名もスバリの[ロックン・ロール]のジャパンツアーで、東京・大阪の2日間のみという貴重な来日公演である。
 そんな魅惑のひと時に吸い寄せられたファンは、平日にも関わらず満場の1300。グラマラスなハードロックスタイルでしっかりキメたファンもいれば、仕事や学校終わりに駆けつけたようなファンも多い。“ロックンロール”を合言葉に集まった様々な世代、様々なファッション、そんなファンの多様性もBuckcherryというバンドの間口の広さを投影しているかのようだ。

 そしてジリジリと高められたファンの期待は、場内暗転とともに爆発、耳をつんざく絶叫や怒号にも似た野太い歓声へと変わる。いよいよ狂宴の園にメンバーが登場だ。
 長旅の疲れも感じさせないフランクな表情、そして繰り出されたのは、デビュー当時の彼らの名を一躍世界中に知らしめた必殺のパーティーアンセム『Lit Up』。一瞬にしてメンバーもオーディエンスもスイッチ全開だ。大きく縦揺れするドクロや“100%LIVE”と誇示されたバンドTシャツの背中越しに、ステージから放たれる猛烈なカリスマ性と爆音。視界がきらびやかになり、胸の昂揚を抑えきれず、勝手に足と腰がリズムを刻む。この華やかさ、楽しさこそロックンロールの真骨頂である。

 新作のジャパンツアーということもあり、最新アルバム1曲目を飾る『Bring It On Back』を序盤から披露。新曲ながら、その盛り上がりは過去作の人気曲と並べても全く遜色ない。オープン前に行われたミート&グリート(※VIPアップグレードチケット購入ファンとの写真撮影や歓談のひと時)では、VANSのハイカットスニーカーにTシャツというラフな服装で屈託のない笑顔を振りまいていたジョシュ・トッド(vo)は、レザーやアニマル柄の切り返しが施されたタイトなパンツに黒のジャケットという戦闘服に身を包み、怪しいオーラをギラつかせる。臓物を掻き回されるようなヘヴィグルーヴに乗って流麗なステップを刻み、ザラつきながらも芯のあるシャウトを飛ばして、楽曲に生々しい体温を行き渡らせていく。
 楽曲が生命を宿したかのような、立体的な躍動感を放ち、観る者のハートと腰にダレクトに響く。Buckcherryが最強のライブバンドである証がそこかしこに垣間見れる。当然、魅せ方やプレイといったステージパフォーマンスの高さは言うまでもないことだが、中でもバンドの中心人物であるキース・ネルソン(g)は、フロアを煽りながらも他メンバーとのアイコンタクトを欠かさない。メンバー5人は呼吸を合わせて熱を増幅させ、目と耳だけではない、楽曲のストーリーを身体で感じさせるものへと作り上げていく。

 『Slamin’』でジョシュのJBばりのステップがフロアを沸かせたかと思えば、唯一無二の歌声が染み入る大ヒットバラード『Sorry』では感動的な大合唱を巻き起こし、スリリングなリフが疾走する新曲『The Madness』、イグザビエル・ムリエル(dr)のどデカいビートと粗野で乾いたギターの絡みがたまらない『Ridin’』、リズムの軽快なポップさがサビのコール&レスポンスを誘う新曲『Tight Pants』と……新曲を交えつつも、これまでのアルバムから万遍なくチョイスされた構成だ。そこにビシッと通った筋は“ロックンロール”のキーワード。5人が紡ぎ出したその極上空間に、メンバー自身もオーディエンスも酔いしれ、ただただ踊り騒ぐのみである。
 そんな新旧問わずの楽曲ラインナップだろうが、Buckcherryの貫禄のステージは場内をひたすら盛り上げていく。時代性に左右されることはなく、過去の人気曲に頼ることもない。今、彼ら自身が最高だと感じるものをストレートに吐き出す。『Gluttony』『Wrath』といった曲は、フルアルバムとしては前作にあたる、2013年発表の比較的新しい楽曲だが、ライブの終盤を担う重要曲となっている。照明で真紅に染められたフロアは、さながらカルト教団の儀式のごとく、鬼気迫る熱狂と一体感を見せた。

 本編ラストを飾るのは、こちらはお約束の『Crazy Bitch』。各パートのソロセクションあり、ダンスで沸かせるシーンもあれば、コール&レスポンスありと、各種エンターテイメントが隙間なく飛び出すビックリ箱のような楽曲だ。とにかく楽しい、魅せる、酔わせる!
 満足度のピークを作り上げ本編は終了したが、『Crazy Bitch』の熱気冷めやらぬまま早々にアンコールで再登場し、繰り出されたのはアイコナ・ポップのカヴァー『Say Fuck It』。2014年発表のミニアルバム[愚か者]収録曲だが、こちらも場内爆ノリのキラーチューンへと急成長を果たした。そしてフロアをキラキラのダンスホールに変貌させたかと思えば、締めは『Too Drunk…』で再びギラギラのロックンロールワールドへ。ダーティなコール&レスポンスで、場内に汗の匂いと熱気を充満させ、全17曲、1時間半の東京公演は幕を閉じた。

 今回、私はステージ間近の距離で観ていたのだが、そこではステージングの一挙手一投足から目が離せず、表情やパフォーマンスからメンバーの気持ちが汲み取れるような環境だった。瞬間の感情を音に乗せ、ステージ上で会話し、そのアンサンブルを衝動や興奮へと昇華させてブチまける。その出音は決してロックだけに止まらない、観る者の感情と身体を“ロック”して“ロール”させるのだ。デビューから15年、世界の第一線で突き進む無敵のエンターテイナーは、ロックンロールを信奉し、その美学の純粋にして真摯なる体現者であることを痛感させられた。今回の来日公演は東京・大阪のみの2日間だったが、少しでも多くの音楽ファンに、Buckcherryが処方する普遍的な妙薬“ロックンロール”の真髄を体感してもらいたい。

[PHOTO by SOSHI SETANI]
[TEXT by GO NEMOTO]



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