H.I.P HAYASI INTERNATIONAL PROMOTION

LIVE REPORT

AGAINST THE CURRENT

THE PAST LIVES WORLD TOUR

2018.12.07 fri at Shinbuya WWW-X
open 18:00/start 19:00
OPENING ACT : FAITH

新世代のPOPアイコンAGAINST THE CURRENT
研ぎ澄まされた表現力にヤラレっぱなしの一夜

 フロアへと向かうドアを開ければ、会場から溢れんばかりに集まったファンの後ろ姿と、ワクワク感に満ちた熱気や喧騒。前作[IN OUR BONES]から約2年半ぶりとなる3rdアルバム[PAST LIVES]を携え、2018年8月メキシコを皮切りに展開されてきたアゲインスト・ザ・カレントのワールドツアー、その日本公演である。前回から約1年強という早いタイミングで実現した来日だが、その“待ってた”感は目に見えて充満している。

 抜群の表現力とルックスを兼備した歌姫クリッシー・コスタンザを擁するアゲインスト・ザ・カレント。新世代のPOPアイコンとして女性人気も高く、この日も10代後半から20代という若い層を中心に賑わっている。そんなオーディエンスの前でオープニングアクトを務めたのは、平均年齢18歳という、これまた若いポップバンドFAITH。
 同世代の感性がその共感を呼び込みつつ、全7曲30分のステージは、キッチリとフロアを沸かせていく。カラッとしながら立体的で、爽快さも力強さも感じさせるアンサンブル。そして英語詞によるリズミックな女性ボーカルが彩りを添え、見た目にも音にも、瑞々しいインパクトを色鮮やかに炸裂させた。長野県・伊那という街からやってきた5人によるピュアで清々しい爪痕に、オーディエンスからの温かい拍手が巻き起こる。

 そしていよいよ、アゲインスト・ザ・カレントの登場だ。真っ青に染まったステージ、幻想的で重厚なオープニングSEにバンドが音を重ね、クリッシーは優しく澄んだ歌声を重ねていく。1曲目は最新作[PAST LIVES]でも冒頭を飾った『Strangers Again』による静かな幕開け。だが、約2年ぶりの再会を果たしたオーディエンスからは、早速コーラスの合唱が巻き起こり、クリッシーもその反応に微笑みをたたえる。9月末リリースの最新作もしっかり届いている様子だ。
 ド頭からハジケた登場で一気に会場の熱を上げるこれまでの来日公演とは違い、幻想的な照明に対して燃えるようなオレンジのファーが映えるミリタリージャケットの肩をはだけ、大人っぽい美しさで魅了するクリッシーの姿。そして、彼女の繊細で艶やかな歌声を、バンドは清らかな清浄感をもったサウンドに乗せて空間へと押し広げていく。そんな心に沁みるような優しい熱は、「ハンズアップ!」の掛け声とともに一気に急上昇を見せる。1stアルバムのタイトルナンバー『Gravity』だ。シャウトを混じえ、真っ赤な照明を浴びて踊るクリッシーのパフォーマンスは強固な一体感を生み出し、ステージ上手に高くそびえるドラムセットのさらに大上段から打ち鳴らされるウィル・フェリのダイナミックなドラミングがオーディエンスを、そしてフロア自体を揺るがす。

 クリッシーの歌力が胸に響く人気曲『Chasing Ghosts』、ライブならでは躍動感が加わわってまた違った印象を引き出した最新作からの『Almost Forget』へと続き、新旧織り交ぜた楽曲はドラマティックに展開していく。目まぐるしく塗り替えられる楽曲の世界観に対し、時にエフェクトワークで、時にデジタルシーケンスに絡むように、Gt.ダン・ガウはそのスケールを広げ、幅広い情景を多彩な表現力で描いていく。ジャケットを脱いで、シンプルなトップス姿となったクリッシーは、腕から指先と流れる動き、そして目線や顔の表情といった細やかなパフォーマンスで、さらにオーディエンスを惹き込んでいく。
「今日は最高な日! なぜなら金曜、週末を迎えるから。楽しみましょう! 騒ぎましょう!」といったMCから『One More Weekend』、80’s的などこか懐かしい情緒を感じさせる『I Like the Way』。ステージを縦横無尽に躍動し、フィジカルを転化させるかのように、よりリズミックにビートを効かせた歌唱を披露。そんな激しさの中でも、ファルセットを駆使した表現も、息遣いのような繊細なニュアンスを感じさせる表現も、終始安定しているボーカルの確かな技術に感心してしまう。

 中盤では、これまでも『涙そうそう』や『今すぐKiss Me』といったJ-POPカヴァーをプレイしてきたアゲインスト・ザ・カレントだが、ここで最新アルバムにボーナストラックとして収録された『NIJI』(Aqua Timezのカヴァー)をプレゼント。サビは見事な発音で日本語詞を歌い、温かくアットホームな空気が会場に満ちる。そしてピアノのイントロが流れると同時に、悲鳴にも近い歓声を巻き起こした『Dreaming Alone』。ONE OK ROCKのTakaが楽曲参加したミディアムナンバーだが、そこここで起こったオーディエンスの歌声はいつしか会場全体の大合唱となり、WWW-Xの空間全体にその美メロが響き渡った。オーディエンスの声も楽曲の重要なパートとして取り込んだ流れは、続く『Roses』の一体感あるコーラスパートに、そしてパワフルなウィルのボトムでさらに数段回ギアを上げてプレイされた『Running With The Wild Things』で、この日のピークへと熱量を押し上げる。髪を振り乱し、貫禄の歌声を響かせる強き歌姫がフロアを煽り、オーディエンスは拳を突き上げ、ビートに委ねて身体を弾ませる。その強靭な一体感は、ビル全体を揺さぶるほどの歓喜の盛り上がりに。

「ダイジョブテスカ? アメイジング!」と、クリッシーも声を掛けるほどにフロアは熱量を高ぶらせたまま、ライブは終盤へと向かっていく。最新アルバムの中でもひときわクールなエッジが立った楽曲『Voices』。クリッシーも俄然エモーショナルなパフォーマンスで魅せ、沸き立つフロアのピークが続く。一糸乱れぬコールアンドレスポンスに、ライブ初披露であることを疑ってしまうような光景だ。ヒリヒリするような肌感がフロアに満ちたかと思えば、カラフルでポップな前作収録の『Runaway』が甘酸っぱい空気で会場を満たす。発表時期もテイストも異なる楽曲を並べていても、会場のテンションを損なうことなく、自在に空気を塗り替えていく。そして今度はまたガラリと変えて、壮大で清浄な空気に満ちた『Demons』。ダンとウィルの壮大なスケール感のあるサウンドがクリッシーの優しく慈愛に満ちた歌声を包み込み、会場全体に清らかな空気を行き渡らせる。なんとも心地よい余韻を残したまま、本編を終えた。

 そんな余韻もつかの間、アンコールに沸き立つ会場に早々に再登場したメンバー。この日のステージに、自身も手応えを得たのだろう。クリッシーは高らかに「今夜はビール飲むわよ!」宣言を発し、くだけた雰囲気の中、アコースティックアレンジでの『In Our Bones』をプレイ。優しく温かみのある照明の中、メンバーのリラックスした自然な表情も楽しませてくれた。しかし同時に、そのシンプルなアレンジの中で気づかされたのが、ここまで15曲、いまだ艶ややさを失わないクリッシーの美声に驚かされ、感動を覚える。
 そんな一流シンガーであるクリッシーだが、ここで「時計見せて」と、フロア最前の観客の腕をつかんで腕時計を拝見。そして「あと、2時間52分でダン・ガウの誕生日です!」と、クッリシーによるリードのもと会場全体での『ハッピーバースデー』大合唱。
 ステージ上もフロアも笑顔に溢れた貴重な一曲を挟み込み、ライブはいよいよオーラスへ。タフなバンドサウンドが遠慮なく渦を巻く中、澄んだファルセットが美しくも力強く響き渡る『Wasteland』。切なさ、力強さ、そして静と動が巧みに混在したアゲインスト・ザ・カレントならではの一曲をもって、長きに渡るワールドツアーの日本公演は幕を閉じた。
 アゲインスト・ザ・カレントの持つ、きらびやかでポップな側面や力強いロックな側面はそのままに、この日のライブでは感情の深淵をのぞかせるような、クリッシーの豊かな表現に目を奪われる瞬間の連続だったように思う。ウィルが土台を築き、ダンが情景描写する空間の中で、時にステージを縦横無尽に躍動し、時にオーディエンスと同じ目線にまで身体を低くして歌う、表現者としての真摯な姿にヤラレっぱなしの一夜だった。作品発表のたびに、来日公演のたびに、新しい魅力に気づかせてくれるアゲインスト・ザ・カレント。ワールドツアーがひと段落した今だが、早速次のアクションが欲しくなってしまうような、そんな期待感を抱かずにはいられない、充実のステージだった。

[TEXT by 根本 豪]
[PHOTOS by 岸田哲平]


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