H.I.P HAYASI INTERNATIONAL PROMOTION

LIVE REPORT

ACROSS THE FUTURE 2016

Crossfaith
GUEST:SKINDRED / HER NAME IN BLOOD / NORTHLANE / coldrain

2016.02.14 sun at 新木場STUDIO COAST
open 16:00/start 17:00

宇宙船ACROSS THE FUTURE
ラウドロックの未来に向けて全力発進!!

 様々なシーンの乱立とムーブメントの入れ替わりが目まぐるしい今日の日本の音楽シーンにおいて、キッズの熱狂度を見ても、商業的な側面から見ても、今もっとも勢いがあると言って過言でないのがラウドロック勢だろう。国内バンドの勢いは、海を越え、世界規模の活動が標準化されつつある。その旗手とも呼べるCrossfaithによるイベント[ACROSS THE FUTURE]が新木場スタジオコーストにて開催された。
2月14日、聖バレンタインデー。前日から列島を襲った冬の嵐も、彼らの勢いに圧されるかのように雨雲は霧散し、昼過ぎにはドピーカン。東京ではまさかの23度を記録した太陽は、すでに臨戦態勢を整え、会場へと押し寄せるTシャツキッズ達をジリジリッと照りつけていた。嵐と灼熱の交錯、まるでこれからの1日を暗示するかのようだ。

 その口火を切ったのはHER NAME IN BLOOD。まずはその急転直下の幕開けが圧巻だった。期待と緊張がない交ぜとなった開演直前の独特な空気を切り裂くかのように、轟く雷鳴のSEと場内を飛び交う閃光、強靭なブレイクダウン、そして背筋が伸びるようなデスボイスの咆哮一発。Ikepy(Vo)の声は一撃で2000人の意識を戦闘モードへ切り替えた。フロアでは早々にドデカいモッシュピットがそこらじゅうに狂い咲き、コール&レスポンスにもガッツリ喰らい付く。メタルコアやデスメタルといったエクストリーム系のラウドロックを完全に自分たちへの血肉へと消化し、エナジーのほとばしりと共に音を飛ばす。オーディエンスをザクザク切り刻んでいくかのような暴力的サウンドだが、それでいてトラディショナルなHR/HMへの愛、エンターテイメントへの愛も感じさせ、その瞬間を最大限に沸かせていくのだ。最強のトップバッターである。昨年9月にリリースしたメジャー1stEP[BEAST MODE]の記憶も新鮮だが、早くも4月に新音源を予定しているとのこと。乞うご期待である。

 続くは、オーストラリア・シドニーからの刺客、NORTHLANE。今回が初来日であり、まだ日本でのリリースもないため、初見のオーディエンスが多い中でのステージだった。が、その独自のアプローチは、キッズ達に嬉しい発見と鮮烈な興奮を十分与えたはずだ。メタルコアやプログレシッヴメタルを基軸としながらも、サイケデリックなアンビエント要素も取り入れたアプローチは、新たなるラウドミュージックの可能性を体感させてくれた。生々しく変幻自在なグルーヴを生み出すドラム、おびただしいLow感で臓物を震わすベース、ギッチリとエフェクトされた両ギターは、もはや無限の広がりを生み出す残響発信器のようである。野人のごときMarcus Bridge(Vo)は、張り裂けんばかりの咆哮を巻き散らしたかと思えば、時に澄み渡るようなクリアトーンを無限の空間に浮遊させる。その音から連想するワードは“波動”である。音の粒子に身を委ね、息遣いを感じろ!と、僕は気づけばフロアのド真ん中で悦に浸っていた。アルコールを放り込んでおかなかったことが悔やまれる。

 今回のNorthlaneによる初来日ステージ、のちに登場するSkindredも同様に、当然Crossfaithの招聘によるものである。特に海外バンドの招聘には、労力もリスクもかなりのものが伴うのが実情だが、それでもやってしまうCrossfaith。その行動力と視野の広さに、改めて世界を舞台に躍進するバンドとしての力強さを痛感させられる。

 世界規模の活躍という意味ではこの盟友も同様、イベントの中軸として貫禄のステージを披露したのはcoldrainである。この日は昨年10月にリリースしたアルバム[VENA]収録の楽曲を中心に10曲を披露。新曲だろうが関係無い。ラウドロックの宝庫のように旨味がギッシリ詰まった楽曲群は、オーディエンスを引き込み、その心に次々と起爆剤を打ち込んでいく。デスボイスのシャウトや透き通るようなクリアトーンを緩急巧みに使い分けるMasato(Vo)のヴォーカリゼイションは、楽曲に立体的な息吹を注ぎ込む。楽曲クオリティが高い、プレイを含めたパフォーマンス能力が高い、それらは当然のように持ち合わせているわけだが、coldrainはそれにも増して、とにかく熱いのだ。Masatoから放たれた密度の濃すぎる熱光線、それをブ厚い一枚岩と化したバンドアンサンブルが極太にし、加速させ、四方八方に炸裂させる。
「Crossfaithはもしかしたら、日本で一番仲が良いバンドかもしれません。だからCrossfaithのイベントに出たからには、サークルピットの一個くらい作って帰ろうかな。デッケェの…ヤッチャってください」
いや、さんざんピット出来てましたけど…と思いつつも、フロアを見渡せばサークルモッシュ、クラウドサーフ、肩車にヘドバンと、何でもごされ。終盤『RUNAWAY』『THE REVELATION』の2曲では、興奮と愛情を眼に見える形にしてステージ上のメンバーへ叩き返す。圧巻、というか、もはやカオスであった。

 これまでの3バンド、ラウドロックを軸にした三者三様のステージは、飽きるどころか、一切の中だるみもなく共に盛り上げ倒してきた。だが、その多彩さ、サウンドの楽しさをより一層、そしてCrossfaithのオーガナイザー手腕の見事さを決定づける要石となったのが、イギリスからやってきたSKINDREDだった。
90年代ミクスチャーロックを通った人なら知る人も多いであろう元Dub WarのBenji Webbe(Vo)率いるSKINDRED。Dub Warはその名の通りやや強めのダブ要素、そしてレゲエやヒップホップとハードロックとのミクスチャーといったスタイルで、当時としては先鋭すぎたのか、確固たるポジションに到らぬまま終息してしまった。しかしながらSKINDREDとして返り咲いたベンジーは、この日もフロアを狂熱の宴へと変貌させる。

 そのルックスはとにかく異質。豊かなアゴ髭を蓄えたギター&ベースの2人は、その奇抜な見た目に反して機械人間のように無機質なプレイを。軍服姿のベンジーは、その太鼓腹に似合わずステージを駆け回り、ドレッドヘアを振り乱しながらアジテーションする。異質で危険な匂いを振りまきながらも、どこかコミカルなのだ。それだけで視線は釘付けである。サウンドは、かつてのジャマイカン要素はリズミックなダンスホールレゲエを中心に据え、より攻撃的なサウンドを伴った暴力グルーヴが繰り出される。オーディエンスのリアクションが薄いもんなら、即ベンジーに「Fxxk you men!」と怒られるわけだが(笑)、それも序盤の話。ダンサブルな曲も緊張感を高めたダークな曲も、どれもが一貫したエンターテイメント性を持ってパフォーマンスされる。気づけば流石のステージにフロアは爆ノリである。ラスト『WARNING』では、出番を控えたCrossfaithのKenta Koie(Vo)がまさかの飛び入り! 2014年に共演を果たしたイギリスのフェス[Download] での一幕を再現してみせた。英国特有のユーモアを振りまいたラウドなダンスホールは、その楽しさをキッズの胸にキッチリ刻み込み、バトンをトリのCrossfaithへと繋いだ。

 [2001年宇宙の旅]のテーマをアレンジしたSEから、1曲目『MONOLITH』へ、という冒頭。今回のイベントタイトル[ACROSS THE FUTURE]に相応しい幕開けであるのだが、荘厳な幕開けから一転、一気にメンバーはフルスロットル! オーディエンスも首がもぎ取れんばかりのヘドバンでフロアを波立たせ、彼らの登場を全身で讃える。この衝撃の光景は、この日のラストまで一寸たりともヘタることなく続くのである。ステージとフロアの熱量放出合戦は、常にピークを求めるように、貪欲にさらなる高みを求め合うかのように。
彼らのスゴさ、それは5人が常に隙のない圧倒的なパフォーマンスを繰り出しつつも、決して揺るがない高い演奏性だろう。サウンド面では、クラシカルな荘厳さとスペーシーな近未来感が独自の世界観を織り成すエレクトロニカ、これがCrossfaithの大きな個性と言えるが、その音源に一糸乱れぬ形で相乗効果的に破壊力を倍増させるリズムセクションとソリッドなギターリフ。そこに際立つ、強靭さを失わないKoieのシャウトの存在感。彼らの誇る無敵のサウンド武装には驚くべき技術と緻密さの再現力が垣間見えるのだ。
そして、そのパフォーマンスに倍返しの熱狂ぶり、底なしのバイテリティで応え続けるオーディエンスも見事としか言いようがない。

 また、この日はイベントということもあり、強力なゲスト要員にも事欠かない状況である。『Ghost In The Mirror』ではcoldrainからMasatoを、『Jägerbomb』ではHER NAME IN BLOODからIkepyとDaiki(Gt)を呼び込む。この2曲ではそれぞれに適任なゲスト起用で、新鮮な魅力を感じさせてくれた。そして『WILDFIRE』ではSKINDREDベンジーが参加し、最新アルバム[XENO]を再現するという貴重の瞬間に立ち会えた。
「XENO JAPAN TOUR 全8公演、そして今日の[ACROSS THE FUTURE]を合わせて9公演、ここでようやくゴールできました。これから俺たちは[XENO]を持って、お前らがくれたパワーを持って、UK、ヨーロッパ、海外でブチかましてきます」
そう、前夜2月13日、Crossfaithはツアーファイナルを同じ東京の豊洲PITで行っていたのだ。本来であれば動員割れなどを考慮して、当然翌日のイベントは避けるべきである。だが、開催した。そして先にも述べたように、2組もの海外バンドを招聘することはリスキーである。だが、招聘し開催したのである。[ACROSS THE FUTURE]に向けての熱意とは何だろうか? Koieはライブ中盤で「今日出てくれた4バンドは全バンドがどこかで繋がってる、そういうメンツで揃えました。俺らが海外に行けるようになった時、海外のバンドを呼ぶことができるようになった時に、俺たちのホームを作ろうってことで[ACROSS THE FUTURE]が生まれました」とイベントの趣旨を話した。僕には、掛け替えのない仲間と共にブチ上げたこの日のパーティは、彼らにとって現時点での集大成であり、ラウドロックの可能性を見せつけるそのイベント内容は、シーンを進化させる彼らの決意表明と取れた。

 Crossfaithはこの日喰らい尽くしたオーディエンスの熱を持って、32公演のヨーロッパ〜ロシアツアーへと旅立つ。またさらに高い、強靭なレベルに達しているであろう彼らのステージを観れる4月が待ち遠しくてたまらない、そんな期待感を植え付けられた一夜だった。

[TEXT by GO NEMOTO]
[PHOTO by CAZROW AOKI]



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