H.I.P HAYASI INTERNATIONAL PROMOTION

LIVE REPORT

Tears of Today Tour 2012

2012.11.10 sat at Shibuya O-EAST
open 16:00 / start 17:00

 

驚異のスピードでファン増殖中のイベントTOTに
アーティストたるピュアな衝動と高い意識を見た

はてさて、このレポートページを開いて、どのくらいの読者の皆さんが、このイベント、そしてイベント出演者をご存知だろうか? 多くの方に周知であればマヌケこの上ない話だが、僕は全く無知な状態でO-EASTへと足を運んでしまったわけだ。一応僕も、頻繁にライブハウスには出向き、巷の音楽情報はそこそこチェックしているつもりなんだが。しかし、そこでは新たなる発見の連続に打ちのめされることになる。
まず会場に入ると最大キャパ1300のデカバコがほぼ満杯。バンド情報もイベント情報も手探りの僕の謎をますます深める。オフィシャルサイトはチェックしたが、その内容はイマイチ掴め切れず、ここ1年半で急速に規模を拡大させているイベントだというくらい。会場には比較的若いファンが目立つようだ。中高生から20代前半というのが客層の中心で、男女比率は6対4で女性が多い、といった感じ。そのイベントのジャンル傾向は観客のファッションに反映されたりもするが、しかしこの日は本当に様々で、Tシャツ半パンのフェス系キッズやロリータファッションの女の子、大人っぽい落ち着いた格好の女性から中には学生服までチラホラ。ヒントを探しつつも疑問は拭えず、同時にその答えへの期待が盛り上がる中、定刻に1バンド目のライブが始まった。

オープニングSEが流れると、ド頭からコレが目玉バンドか!?と思わせる、怒濤の歓声が! 自称・メランコリックポピュラーソングバンドという大凶作、そのポップな枕詞とは裏腹(?)に、サウンドは超ヘヴィーグルーヴがのたうつメタルコア/ポストハードコア系。ツインペダルと5弦ベースによる凄まじいローレンジを利かせたボトムに、片やリズミックなドンシャリギター、片や様々な音色と印象的なフレーズを巧みに繰り出すリードというツインギター編成。そして、地を這うような猛烈なグロウル(※低音を利かせた咆哮による歌唱、というか叫び)とメロディアスな歌を使い分ける女性ボーカル。しかしとにかく全員上手いのだ。踊るようなパフォーマンスでウネリを作り出すガスマス子(Ba)と、大和(Gt)の多彩なフレーズワークとの絡みが楽曲の個性を輝かせている。そしてをDEATH姫(Vo)の、小柄な身体からは想像できない、全身を振動させて放出するような歌唱に圧倒させられる。中盤では稲穂を手に取り”Say- 穂(ho)〜”と観客とのコールアンドレスポンス、そして場内アナウンス的なMCで会場を笑かしつつ煽ったり、ライブならではの空気作りもツボを得ているし、何より演者がデカいステージを楽しんでいる。MCいわく「伝説のオープニングアクト、大凶作です!」とのことだが、スターターとしてはこれ以上ないぐらい見事なステージングであった。
というわけで大凶作のステージ終了後、やや興奮状態で楽屋に向かい、自分の勉強不足を露呈しつつ、今さらながら関係者の皆さんに情報収集を開始したところによると…、この日のイベント主催者はnekoという人物。「ニコニコ動画」で歌い手として活動していた彼が、シンガーソングライターとしての自身の活動拠点のために設立したレーベルがTears of Todayというわけだ。その出演者ラインナップには、同レーベル所属アーティストをはじめ、いずれもニコ動や、そこから派生したシーンで活躍する名のある歌い手や楽器プレイヤー、さらにはボーカロイド・プロデューサーといったアーティスト達が集結(※ボーカロイドとは、「初音ミク」や「巡音ルカ」といった音声合成ソフト。簡単に言えば、メロディと歌詞を入力すれば、サンプリング音声を使って歌わせることができる)。いわゆるこれまでの、街のライブハウスでのライブやCDセールスを活動基盤にし、TVやラジオ、雑誌といったメディアで宣伝を行なうといった従来のミュージシャンとは違い、まずはインターネットが彼らにとっての中心的な活動展開のフィールドとなる。その辺に疎い僕としても、このご時世、全く知らない存在ではなかったが、実際にO-EASTを観客で埋め尽くすこの状況を目の当たりにし、単純にド肝を抜かれた。方法論は違えどやってることは同じ音楽である。偏見の持ちようもないこの状況下で、イベントが進むごとに、この連中の只者でない実力を痛感させられていくことになる。

二番手はパンディズマ。イベント主催者でもあるnekoがDJ nekorillexとして参加する、HIPHOP要素をミクスチャーさせたラウド系のバンドだ。そのnekorillexがDJプレイでオープニングを飾り、バンドがいよいよ登場すや否や、重厚で硬質なサウンドの波が押し寄せる。グルーヴは横ノリで、わかりやすく言ってしまえばRAGE AGAINST THE MACHINEだが、もう少しパーティ色を強めた感じだ。ボーカルの”しろくろ”はラップと歌を使い分け、ラップの上手さもさることながら、歌メロパートでの太く、程よく枯れてザラッとした声質が男臭い色気を感じさせる。そこにスクリームやリアルタイムでのシーケンス音源が飛び交い、バンドの個性を強く打ち出してくる。同期も多用しての腹に響くビートで会場を思いのままに揺らし、「これまたスゲェ上手いなぁ〜」なんて見てたら、さらなる驚くべき事実をMCで知らされる。
「今日がファーストライブです」
この高いクオリティでファーストライブって…。確かに、歌い手やギタリスト、ベーシスト、ドラマー、キーボーディスト、プロデューサー、アレンジャーなどなど、各々が個として活動しているニコ動のアーティストは、ネットワーク上でコミュニケーションをとり、好きなメンバーをチョイスして音源を作ったりセッションするのが常なわけだ。だから、こういった突発的なユニットというのも実現可能だし、プロジェクトを掛け持ちするメンバーも多い(※実際に大凶作、この後に出るFORCE PRIMEとMy Eggplant Died Yesterdayでは、ドラマー隈(クマ)が叩いている。1日で3バンド掛け持ちというのもスゴい話だけど)。しかし…それでこのバンド感である。脱帽だ。
こうなって来ると、もはや驚き待ち状態である。次のFORCE PRIMEに期待を寄せて、フロアど真ん中でその登場を待つ。SEが流れバンドメンバーが登場。気付けばフロア前方は大半が女性に変わり、黄色い歓声が飛び交う。期待が高まる中、ボーカル登場!と、思いきや、ママチャリでステージを横断(笑)。編成はオーソドックスな4ピースで、ハイキーでエモーショナルな「てん」のボーカルを中心に据えた、ある意味ストレート、ある意味真っ向勝負のバンドサウンドだ。が、しっかりまとまったアンサンブル、そしてドラマティックなメロディを活かす技術を十二分に発揮している。

演奏だけでなく、見事に意表を突いた登場パフォーマンス以降も、特大バルーンをフロアに投げ入れたり、会場全体でのタオル回しといったパフォーマンスもあり。音源にはない、映像だけでも伝わらない、立体的かつ複合的な”ライブならでは”の臨場感やエンターテイメントな空間をたっぷりと提供してくれる。確かにファンにとっては、年齢的な若さもあるが、ネットが情報収集の中心となる都合上、ライブを生で見る機会というのはさほど多くないかもしれない。そう思わせるほどに、周りの観客の目はキラッキラしてるのだ。全5曲をプレイしたライブの終盤、ふと横を見ると学生服を着た高校生ぐらいのカップルの存在に気付く。どうやらライブ初体験らしい彼女に対し、彼氏が歓声のレクチャーをしたり、盛り上がることを促したり。微笑ましいと思いつつ、この日のイベントが多くの観客にとって、ライブというカルチャーの導入的存在として在ることを実感する。
イベント中盤に差し掛かり、いまだテンションの落ちない会場に4番手として登場したのはamu。むむ、V系の美男。FORCE PRIME同様、フロアでは黄色い歓声と女性の細腕が突き上がる。そして彼らもまた、というか予想通り実力派だ。しかもamuの場合は、よりライブバンドらしい奥行きを感じさせる。妖艶な艶もあり、繊細なニュアンスが重要になってくる歌唱だが、バックに負けない強さを兼ね合わせたボーカリゼイション。ソリッドなツインギターサウンドを際立たせた上に、鍵盤も、そしてベースも歌う、ブ厚いバンドサウンドのド真ん中を抜けて来る。

MCでこの日の出演に至るまでの経緯や喜びを語りつつ、広いステージを縦横無尽に動き、その気持ちを込めたようなパフォーマンスで魅せる。ラストの曲ではパンディズマの「しろくろ」も飛び入り参加し、プチ漫才を披露。いやプチ漫才的な掛け合いの後にもちろん楽曲を披露。言ってしまえば、片やV系、片やラウド系のボーカリストだ。本来はマッチングが難しいように思われる二人だが、受け手はそんな垣根なんか微塵も気にせずに盛り上がる。ジャンルやスタイル、表層的な括りに捉われずに音楽を楽しんでいる光景が目の前で繰り広げられ、なんだか清々しく、そのピュアさに嬉しさもこみ上げて来る。ファンが、そのイベントやバンドの映し鏡だとするならば、このイベント自体が音楽の垣根をブッ壊す在り方をしているってことだ。パフォーマーには実力派が勢揃いし、主催者の意図を如実に反映する観客が大勢いる。まだまだイベント中盤だが、いよいよ良いイベントだぞ、これは。
このイベントTears of Today(通称TOT)は昨年5月、東京・大阪のキャパ200人弱という小箱ライブハウスから始まった。それが同年11月には東名阪に小倉(福岡)を加え、全箇所をほぼソールドアウト。今年に入ってもその勢いは加速し、5月には渋谷で2デイズを大盛況に終え、8月には大阪RUIDO、東京では新宿ロフトにてキャパ550をソールドアウトさせる。倍々ゲーム的にファンを増殖させ、約1年半でここ渋谷O-EASTに1000人を集めるに至ったわけである。「ニコ動」のプロモーションツールとしての確実性や即効性も間違いなくあるわけだが、話題や評判だけではない、演者やイベントの内容に確固たる中身があってこそ実績につながるわけだ。このイベントの歴史はそれらを明確に証明している気がする。
さて、いよいよ後半戦に突入。ここでまた会場の空気をガラリと変えたのは、ボカロ・プロデューサーとして有名なwowaka(Vo,Gt)率いるヒトリエだ。言葉数少なに、そして矢継ぎ早に極上のダンスロックを繰り出す。ポストパンク/ニューウェーブ的なスクエアなリズムワークが会場全体の肩と腰を揺らし、O-EASTを巨大なダンスホールへと変えたのだ。

間違いなくステージに立ち続けることで手にしたであろうライブバンドのグルーヴを武器に、そしてwowakaのファルセットを巧みに使いこなした表現力で、情感豊かな曲の世界観を構築していく。内に抱えたドロッとした感情を吹っ切るように音と熱を放出する。バンドとして表現したい世界観が明確にあって、高い意識をもってそこに到達しようとしてるような真摯なステージングだ。僕的にも、レポートの仕事を放棄して、単純にライブを楽しみたいぐらいのパフォーマンス、ヤバい! ラスト5曲目はwowakaのプロデュースしたボカロ・オリジナル曲「ローリンガール」で、さらなる爆ノリを生み出し終了。
そしてイベント開始から3時間半、ここ来て会場熱量のさらなる記録更新を見せたMy Eggplant Died Yesterday、通称MEDYの登場だ。彼らの楽曲もスクリーモが軸となったメタルコア/ポストハードコア系だが、演奏時の激しい印象からは一転、MCでは「僕もバンドマン。憧れのバンドが出たO-EASTのステージに今立っちゃってるんです!!!」と、愛嬌たっぷりな少年の顔を見せたボーカル「ゆよゆっぺ」。そんな屈託のないキャラも人気の要因だろう。楽曲もひたすらゴリゴリ押しというだけではなく、曲のベースとなる歌メロのキャッチーさと叫びパートとの掛け合いが絶妙である。こちらもボカロ・プロデューサーとして有名な「ゆよゆっぺ」のコンポーザーとしての手腕が冴える。熱いMCとエモーショナルな楽曲の応酬はますます会場の温度を上げていき、踊る観客で床が心配なぐらいフロアをグラグラと揺らす。6曲目では、てん、neko、そしてこの日はゲスト出演のみのギタリスト「さー太」が飛び入りし、「ゆよゆっぺ」がnekoに提供したという「Let this heart out」で締める。会場中に大合唱を巻き起こし、温かい一体感をもって終了。そして、このイベントの主催者でありトリを務めるnekoへとバトンをつなぐ。

nekoは、Vo&Gtのnekoを筆頭に、Gt、Key、Ba、Drという5人編成で、余計なギミックや飛び道具は極力排除したかのような一見シンプルなギターロック。だが、その洋楽的に美しく織り重なるアンサンブルは楽曲にデッカい広がりをもたらす。これぞ音楽の、バンドの醍醐味である。メロディをはじめ、楽曲としての軸がしっかりと在り、そこが秀逸だからこそ勝負できるのだ。その貫禄を裏打ちする実力を見せつけた。特に本編ラストの「musique」ではメンバーの呼吸が見事にコントロールされ、凄まじい熱量をもって圧巻のセッションを見せる。メンバー自身も、その相乗効果が生み出すバンドマジック的な瞬間を楽しんでいるようだ。ライブの”見せ方”という部分でもしっかり練られているようで、アンコール1曲目ではピアノ伴奏に歌のみで冒頭1コーラスを歌い(この時の歌唱がまた抜群!)、一つのステージにしっかりと物語を見せてくれた気がする。アンコールを含め全7曲、本日の出演者も会場に集まった1000人の観客も、みんなが認める兄貴分的な存在感に納得のステージを披露した。

メニュー終了後には本日の全出演者を呼び込み、各バンドのボーカルが観客に対して感謝の気持ちを伝えていく。演者一丸となった大団円の最後をnekoが締め、フロアが歓声に沸き返る中の十数秒間、頭を下げ続ける姿が印象的だった。
「何のために音楽をやってるのか? 誰かに聞いてもらわないとやってる意味がないんすよ」とは、MEDYのライブ中のMCの言葉。ごくごく当たり前の言葉だが、同時に何の装飾もない、確実に心からの言葉だろう。彼らは、ニコ動をはじめとした無償の発表の場を、クリエイターとしての自己表現の場として利用している。後の音源販売はあるにせよ、まずは商業活動に先立って自分の作品を世に発表する。かつて70年代半ばのイギリスでは、金もバックアップもない、それでも自分のアーティスティックな才能に絶対の自信を抱く若者たちが、手段を制限された状況下でも自分たちのクリエイティヴィティを様々な発想をもって表現した。それがパンクという革新的かつ爆発的なカルチャーを形成するに至った要因の一つだ。それに通じるようなアーティストを突き動かすピュアな衝動とピュアだからこその力強さ、それらをこの日、ライブというよりリアルな環境でしっかりと見せてもらった。長丁場のイベントでもほとんど立ち去ることもなく、パフォーマーの一挙手一投足を見逃さないように、そして終始温かく歓声を上げていたファンの姿に、Tears of Todayというイベントが投げかけた立体的な自己表現に対する最高の回答を見た気がする。

[TEXT by GO NEMOTO ]
[PHOTO by Yuji Honda]



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